池ノ上さんの話を伺うと、Pepperを起点に受付業務システムが構築されたのではなく、既存の店舗管理システムの連携先する顧客とのタッチポイントとして、UX(ユーザー体験)の優れたPepperが導入されたことが分かります。実際、開発よりも「Pepperを使い、どんなおもてなしを実現するか」を考えることに時間を費やしています。
例えば、Pepperの発する音にも気を遣います。池ノ上さんは「Pepperが話す言葉は高音で、人によっては耳障りと感じるかもしれません。音には非常に気を遣っています」と話します。確かに私が来店したときは気にしませんでしたが、人によっては高音すぎると不快に感じるのかもしれません。
また面白いのが、満席時に待機しているお客さんを呼び出すときのPepper君の姿です。外食チェーン店で、よく「4名でお待ちの●●さま、いらっしゃいませんかー?」とスタッフの方が大声で叫ぶ姿を見ることがあると思いますが、そのお客さんがいるのかいないのか分からないときは、従業員も困ってしまいます。
しかし、Pepper君は何度か番号を呼んで反応がなかったら、「いらっしゃいませんねー?」とバッサリ切って次のお客さんを呼び出します。人間のスタッフだと「たまたま席を外していただけで、並んでいたのに……」と後からクレームが入ることもありそうですが、Pepperに言われると不思議と角が立ちません。
池ノ上さんによると、このせりふを言うかどうかも最初は迷っていたそうです。「店内にいるかどうか確認するせりふがないと、『今発券しようとしたのに』というクレームにつながるかもしれませんので、あえて言葉として入れました」
おもてなしを追求する中で、服装にもこだわりました。はま寿司のスタッフと同じ服装に身を包むPepper君ですが、被っている帽子は従業員の中でも偉い人が被っているものなのだとか……。
今では小さいお子さんからお年寄りまで幅広いお客さんに愛されているPepper君ですが、実験店舗を増やすにつれ、さまざまな課題が浮かび上がってきたそうです。また、池ノ上さんはPepperを活用するに当たり“特にこだわったこと”があり、それが結果的にプロジェクト成功にもつながりました。
明日公開する後編では「はま寿司でPepperが活躍できる理由」の本質に迫ります。
株式会社デコム R&D部門マネージャー。 セイバーメトリクスなどのスポーツ分析は評判が高く、NHKに出演した経験もある。他にも政治、経済、文化などさまざまなデータをデジタル化し、分析・予測することを得意とする。 本業はインサイトを発見するためのデータアナリティクス手法を開発すること。
著者連絡先はこちら→kentaro.matsumoto@decom.org
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