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カエルの合唱に“一斉に休む”法則 IoTに応用、通信安定に期待

» 2019年01月09日 17時34分 公開
[ITmedia]

 ニホンアマガエルの合唱は、個々では鳴くタイミングをずらし、全体では一斉に休む時間がある――筑波大学、大阪大学が1月9日、そんな研究結果を発表した。カエルの合唱の法則性を、IoT機器のネットワークに活用すれば、近くの端末同士のパケット衝突を回避でき、ネットワーク全体の接続性向上やエネルギーの省力化が期待できるという。

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 研究チームは、オスのカエル3匹を50センチ間隔で並べ、録音した鳴き声を解析。短時間でみると「オス同士は鳴くタイミングをずらしている」という先行研究の結果に加え、長時間でみると「鳴いている区間(時間帯)をそろえる」という性質を確認した。

 同チームは、個々のカエルは鳴くたびにエネルギーを失い、疲労度が増すという仮説を立てた。その上で、エネルギーと疲労度、周囲で鳴いているオスの有無によって発声状態(周期的に鳴き声を発する状態)と休止状態(鳴かずにエネルギーの消費を抑える状態)を確率的に切り替える数理モデルを作り、シミュレーションしたところ、実際のカエルの合唱を再現できたという。

 ニホンアマガエルはこのようにして、夕暮れから日付が変わるころまでの長い時間、合唱を維持できていると、研究チームは分析している。

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 さらに、この数理モデルをIoT機器同士のネットワークの制御に応用した。センサーが付いた100台の無線端末が置かれ、バケツリレーのようにデータを送っていくことで情報を収集する状況を考え、端末ごとに通信タイミングを制御できるかをシミュレーションした。

 このシミュレーションにカエルの合唱の数理モデルを用いたところ、近くの端末同士が同時にデータ(パケット)を送り合い、受け渡しに失敗する問題(パケット衝突)を回避でき、ネットワーク全体としては一斉に通信状態と休止状態を切り替えられることが分かった。研究チームは、ネットワークの通信性能向上や消費電力の低減が期待できるとしている。

 研究成果は、英国王立協会が出版する科学誌「Royal Society OpenScience」に1月9日付で掲載された。

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