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いよいよ施行された「改正著作権法」は、弁護士や学者にとってビジネスチャンスとなるかもしれない「STORIA法律事務所」ブログ(2/3 ページ)

» 2019年01月22日 07時00分 公開
[杉浦健二ITmedia]

他人の著作物の軽微利用が許される「所在検索サービス」「情報解析サービス」とは

 著作物の軽微利用について定める著作権法新47条の5は、ざっくり説明すると、以下の通りです(細かい要件は省略しています)。

 ▼世の中にある情報を検索エンジンで検索し、検索結果を表示する場合に、元の著作物の内容を一部提供(サムネイル表示やスニペット表示)するようなサービス(所在検索サービス

 ▼AI等による情報解析を行い、その結果を提供するようなサービス(情報解析サービス

 これらを政令が定める基準に従って行う場合、公表された他人の著作物について軽微な範囲で利用することができる。

 所在検索サービスについては著作権法新47条の5の1項1号、情報解析サービスは同条1項2号でそれぞれ定めています。新47条の5は長い条文ですが、以下の太字にした部分だけ読めば概要を理解できます。

改正著作権法 第47条の5

(電子計算機による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微利用等)

 電子計算機を用いた情報処理により新たな知見又は情報を創出することによつて著作物の利用の促進に資する次の各号に掲げる行為を行う者(当該行為の一部を行う者を含み、当該行為を政令で定める基準に従つて行う者に限る。は、公衆への提供又は提示(送信可能化を含む。以下この条において同じ。)が行われた著作物(以下この条及び次条第二項第二号において「公衆提供提示著作物」という。)(公表された著作物又は送信可能化された著作物に限る。)について、当該各号に掲げる行為の目的上必要と認められる限度において、当該行為に付随して、いずれの方法によるかを問わず、利用(当該公衆提供提示著作物のうちその利用に供される部分の占める割合、その利用に供される部分の量、その利用に供される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものに限る。以下この条において「軽微利用」という。)を行うことができる。ただし、当該公衆提供提示著作物に係る公衆への提供又は提示が著作権を侵害するものであること(国外で行われた公衆への提供又は提示にあつては、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものであること)を知りながら当該軽微利用を行う場合その他当該公衆提供提示著作物の種類及び用途並びに当該軽微利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

一 電子計算機を用いて、検索により求める情報(以下この号において「検索情報」という。)が記録された著作物の題号又は著作者名、送信可能化された検索情報に係る送信元識別符号(自動公衆送信の送信元を識別するための文字、番号、記号その他の符号をいう。)その他の検索情報の特定又は所在に関する情報を検索し、及びその結果を提供すること。

二 電子計算機による情報解析を行い、及びその結果を提供すること。

三 前二号に掲げるもののほか、電子計算機による情報処理により、新たな知見又は情報を創出し、及びその結果を提供する行為であつて、国民生活の利便性の向上に寄与するものとして政令で定めるもの

2 前項各号に掲げる行為の準備を行う者(当該行為の準備のための情報の収集、整理及び提供を政令で定める基準に従つて行う者に限る。)は、公衆提供提示著作物について、同項の規定による軽微利用の準備のために必要と認められる限度において、複製若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この項及び次条第二項第二号において同じ。)を行い、又はその複製物による頒布を行うことができる。ただし、当該公衆提供提示著作物の種類及び用途並びに当該複製又は頒布の部数及び当該複製、公衆送信又は頒布の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 所在検索サービスはGoogleなどの検索エンジンが代表例ですが、indeedやtrovitなどのアグリゲーションサイト(情報集約サイト)や、書籍の中の単語などを検索できる書籍検索サービス、今流れている音楽について検索できる楽曲検索サービス(Shazamなど)もこれに含まれます。

 例えば本投稿時点で、Googleで「資金決済法 弁護士」で検索すると以下の検索結果が表示されます。そこにはURLのみならず、記事タイトルや記事内容の一部が記載されています。このような検索結果が著作物に該当する場合でも、その一部を表示すること(スニペット表示やサムネイル表示など)、すなわち著作物の軽微利用について、一定の要件を満たせば権利者の同意なくとも可能としたのが新47条の5です。

photo Googleにおける「資金決済法 弁護士」の検索結果

 ウェブ上にアップロードされた情報を対象とする検索エンジンについては、旧法47条の6でも検索結果の一部表示が可能とされていましたが、今回の改正は要件が更に緩和され(アップロードされた情報に限らず、広く公衆に提供提示された著作物も含まれることになった等)、対象サービスが所在検索サービス一般に拡大されました。

著作権法施行規則では「学識経験者への相談」が明記された

 いよいよ本エントリのポイントです。新47条の5第1項は、所在検索サービスや情報解析サービスにおいて他人の著作物の利用が認められる要件として、サービスを政令で定める基準に従って行うことを求めています。

 この政令で定める基準が「著作権法施行令」であり、施行令から更に具体的な基準が委ねられたのが「著作権法施行規則」です(以下あわせて「政省令」)。

 施行令はこちらの新旧対照表施行規則はこちらの新旧対照表を確認いただきたいのですが、それぞれの適用関係が微妙に分かりづらいため、概要を以下にまとめました。

 すなわち、所在検索サービスや情報解析サービスにおいて、他人の著作物を新法47条の5に基づいて利用する場合には、以下の政省令が定める基準を満たす必要があります

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