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ジャック・バウアーは暴走しすぎ? 海外ドラマ「24」にみる政府機関のハッキング架空世界で「認証」を知る(2/3 ページ)

» 2019年03月09日 07時00分 公開
[朽木海ITmedia]

 このエピソードには解説が必要だろう。まず、歴史背景だ。そもそもiBookをご存じない方も多いかもしれない。Apple社のMacintoshコンピュータ、ノート型モデルで、最初のiBookのトランスルーセントデザインをそのままに、「持ち歩けるiMac」として企画された製品だ。搭載されているのはPowerPC G3で、現在のIntel CPUではない。

 2001年当時、米国ではまだADSLは普及しておらず、ダイヤルアップ接続が主流だった。日本と違い、市内通話は定額の契約も多かったので、基本的にはダイヤルアップをつなぎっぱなしで運用することが多かったようだ。

 しかし、電話回線を占有するわけだから、自宅へ電話をかけるのが難しくなる。そこでおそらく、キムにはiBookのための専用の電話回線が与えられていたのだろう。ジャックがCTU職員に教えた電話番号とはそれであろう。CTU職員はその電話番号の通信を傍受したか、乗っ取りを行ってiBookのパスワードを入手したと推測できる。

 実際、そうしたことが可能だったかどうかだが、CTUには当然通話の傍聴の仕組みは提供されていたと考えられるし、通信をつなぎかえることもできたのだろう。ただ、外線から侵入して、Mac OSのパスワードを入手するのはなかなか難しそうだ。もちろん、そうしたこともできるからこそCTUに雇われているのだろうが……。

 ちなみに、結果としてキムの夜遊び→行方不明はパーマー議員暗殺計画に関係があったのだが、この時点では判明していなかったため、ジャックの一方的な法律違反である。

駐車場のロックナンバーもハッキング? 一体どうやった?

 そうした中でもパーマー議員暗殺計画は着々と進行し、CTU内の内通者による妨害も発生する。ジャックに「内通者がいる」と明かした上司のリチャード・ウォルシュが、決定的な内通者の情報を入手するが、テロリストによって襲撃されてしまう。

 「ジャック、助けてくれ。2350のダンロッププラザで銃を持った2人組の男に狙われている」

 リチャードはジャック以外のどのCTU職員も信用していないため、ジャックに助けを求める。ちなみにダンロッププラザとはロサンゼルスにあるオフィスビルのこと。ダンロッププラザに到着したジャックは、同僚のニーナに頼み、ダンロッププラザの北駐車場の解除コードを調べさせるのだ。

 「ダンロップね。……あったわ。91360*」

 あっさりと解除コードが判明し、シャッターが開いてしまう。この間、サーバをハッキングした形跡などもない。おそらく、CTUのデータベース内にこの解除コードが保存されていたということなのだろう。

 安全保障上の観点から、CIAのような組織にこうした施設の解除コードなどが知らされている……というのはありえなくもない話だが、もしかするとCIA(=CTU)は普段からこうした情報を収集して保管しているという設定があるのかもしれない。特にジャックのような暴走しがちな捜査官がいるとなるとちょっと恐ろしい話ではある。

世界の全ての情報を収集する「エシュロン」とは本当にあったのか?

 このように、CTUがやすやすとセキュリティを突破したり、情報を入手したりするのは、おそらく「エシュロン計画」が実際に運用されていたという想定で創作されたものだろう。

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