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“数字に弱いニッポン”、統計不正で露わに 「データの歪み」なぜ放置? 国会議員×元日銀マンが斬るこれからのAIの話をしよう(データ編)(2/4 ページ)

» 2019年03月13日 07時00分 公開
[松本健太郎ITmedia]
統計不正 初鹿衆議院議員

初鹿 (間違ったデータを使うことで、政府が)政策の判断を間違えてしまっている可能性を憂慮しました。特に今年は消費税を上げるかどうかを決めるタイミングです。家計消費に大きく影響しますから、実質賃金が上がっているか下がっているかという傾向の判断は非常に重要です。

 特に、世帯所得中央値に満たない世帯の可処分所得が増えないと、 家計消費全体が盛り上がらないと私は考えています。税率が上がればその分だけ消費は減るでしょう。だから私たち立憲民主党はこの問題に強くこだわっています。

鈴木 特に、毎月勤労統計は社会保障の過少給付に影響しています。一番弱い人たちにダメージを与えてしまったことも問題ですね。

―― 誤ったデータを用いることで、国の意思決定や国民への影響に大きな影響を及ぼすことが分かりました。鈴木さんは日銀時代に統計を扱う上で意識されていたことはありますか。

鈴木 一番は「真実性」です。データは正確に作る必要がありますが、その後の政策にどう使われるかを気にしてはいけません。データを作る側と利用する側を明確に分けないといけないと思っていました。使われ方を気にして作り始めると、データがゆがんでしまいます。政策論争とは切り離さないといけません。

 だからこそ、統計の原則として中立性や非政治性を重んじています。総理府統計局長(当時)を務めた島村史郎さんが刊行した『統計制度論―日本の統計制度と主要国の統計制度』では、統計の10原則として1番目に「非政治性の原則」を掲げているぐらいです。

初鹿 今回の統計偽装問題は、テクニカルの部分だけでなく、鈴木さんが指摘された問題も絡んでいるから複雑なんです。04年から一部抽出調査に切り替えたキッカケも分からない。なぜローテーション・サンプリング(毎年3分の1の標本を入れ替える方式)に切り替えたのか経緯もはっきりしません。

鈴木 統計理論上はローテーション・サンプリングの方が望ましいといわれています。ただ、サンプル替えの回数が増えると調査実務がかなり大変になります。2〜3年に1度まとめて替えてしまった方が、現場の負担は小さい。

初鹿 統計委員会が、ローテーション・サンプリングはコストと手間がかかりすぎるという判断を下したはずなのに、なぜかその意思決定が覆されたわけです。中立性、非政治性に問題が無かったのかは極めて重要な問題です。

「データはいかようにも作れる」の怖さ

―― 一方で、ローテーション・サンプリングを導入したことで統計の精度が上がったので、今回の変更を「良い介入」だと考える人もいるようです。

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