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現金にはない「キャッシュレス決済」のリスクITりてらしぃのすゝめ(1/2 ページ)

» 2019年04月01日 07時00分 公開
[宮田健ITmedia]

 最近では経済産業省が「プレミアム“キャッシュレス”フライデー」なる施策を打ち出すなど、国を挙げてキャッシュレス決済を推進しています。

 クレジットカード、電子マネー、そしていま話題のQRコード決済など、キャッシュレス決済は私たちにとって身近なものになってきていますが、便利さの裏には“リスク”もあります。今回のコラムでは、「お金」にまつわる話をIT的な視点でいま一度考えてみたいと思います。

連載:ITりてらしぃのすゝめ

「身近な話題を例にITリテラシーを高めていこう」がコンセプト。さらっと読めて人に話せる、すぐに身につく。分かりやすさ重視で解説。小ネタも扱います。

(編集:ITmedia村上)

クレジットカード不正利用の現状

 日本におけるクレジットカードの普及率は年々上昇しており、日本クレジット協会によると、全クレジットカードのショッピング枠合計を表すクレジットカードショッピング信用供与額は年々増えており、2017年度は前年比8.2%増の58兆3711億円でした。カード発行が増えているだけでなく、その使用率が判断できる未返済残高ともいえる信用供与残高は11兆384億円(2017年12月末時点)という数字で、それなりにクレジットカードは利用されているのが分かります。

クレジット クレジット関連統計(日本クレジット協会

 利用者が増えているクレジットカードですが、不正利用の問題も深刻になってきています。日本クレジット協会が公開している「クレジットカード不正利用被害統計」を見てみましょう。

クレジット クレジットカード不正利用被害額の発生状況(日本クレジット協会

 ここからいくつか興味深いことが分かります。クレジットカード不正利用被害額は減ってはいないものの、「偽造カード」の被害は明らかに減っています。これまではクレジットカードの磁器テープをスワイプして情報を抜き取り、新しいカードを複製して偽造するという手口が多かったのですが、いまは「ICチップ」搭載のカードが増えました。ICチップは複製が難しく、最新の設備を持つ店では店員がカードを手に取ることなく決済ができるようになっています。それもあり、偽造そのものは被害額が減っているのです。

 ただし、やはり問題は「クレジットカードの番号盗用」です。これはECサイトなどからカード情報が流出し、ネット上に存在するブラックマーケットで売買された結果、不正な利用が行われるというもの。ネットでクレジットカードを利用する限り、そこから情報が漏えいして被害を受けることはリスクとして認識しなくてはなりません。とはいえこれらの数値はあくまで、既に各カード会社が“不正利用されたことを認識している”金額です。基本的には各カード会社の会員規約に基づいてカード会員にその責がないとされれば、不正利用された額の支払い義務はありません。

 不正にカードが利用されたとしても、その事実が把握できている間は、私たちはむしろ安心してクレジットカードを使えるとも考えられます。その点では現金よりも安心できると、私は認識しています。

浸透する電子マネー、クレジットカードとはどう違う?

 FeliCaなど非接触IDを使った電子マネーも私たちにとって身近なものです。日本では2004年からNTTドコモによる「おサイフケータイ」が登場し、携帯電話事業者の垣根を越え普及が進みました。特に交通系電子マネーであるSuicaは利用頻度も高く、2016年に発売された「iPhone 7/7 Plus」や「Apple Watch Series 2」が電子マネーに対応してからはさらに身近になっています。

 私もメインの電子マネーは、クレジットカード後払いに対応したポストペイド電子マネー「iD」を使っており、それが使えないところではSuicaを利用するので、普段の生活でほとんど現金で支払うことがなくなりました。

 物理的なおサイフは小さなものになりましたし、自動販売機も電子マネー対応が進み、小銭を使う必要もありません。荷物が減り、お財布を落とすリスクが減ったものの、逆にスマートフォンの重要性が高まることになるため、画面ロックや電子マネーのアプリロックなどは以前よりも厳重に行うようになりました。

 多くのコンビニエンスストアやショップなどは、電子マネー対応していればクレジットカードも利用できることがほとんどです。最終的にはクレジットカードで引き落とされるならば、電子マネーではなくクレジットカードそのものを利用すればいいと思うでしょう。でもそこにはほんの少しの違いがあります。それはクレジットカード番号そのものが利用されるか否かという点です。

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