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押井守監督作品で考える「VRオンラインゲームの個人認証」架空世界で「認証」を知る(1/2 ページ)

» 2019年04月16日 07時00分 公開
[朽木海ITmedia]

この記事は認証セキュリティ情報サイト「せぐなべ」に掲載された「架空世界 認証セキュリティセミナー 第14回『オンラインVRゲームにおける認証【アヴァロン】」(2018年1月25日掲載)を、ITmedia NEWS編集部で一部編集し、転載したものです。当時未発売だった製品やサービスの記述などは、本記事掲載時の状況に合わせて編集しています。

「犬」といえばこの監督

 ……それでは講義を始める。

 前回スター・ウォーズを題材に、「フォース」で認証を突破できるかを考察した。ジェダイには認証の突破のような細かい作業は向いてなかったようだ。一方で、R2-D2のハッキング能力の高さが光った。

 さて、2018年は戌年だった。さすがに犬が認証のカギになる作品は思い付かなかったのだが、犬を頻繁に作品に登場させる監督と言ったら、ちょっとアニメや映画に詳しい諸君ならすぐに思い付くだろう。そう、押井守監督だ。

 今回は押井作品の中から、ちょっと通好みの実写作品「アヴァロン」を題材に、VRゲームにおける認証を考察していきたいと思う。

「アーサーここに眠る いつの日か再び蘇えらん」

 まずは基本データから紹介しよう。

 2001年に日本で公開された実写映画で、ロケは全編ポーランド。出演者も全てがポーランド人という一風変わった作品だ。ポーランドでも2002年に公開された。

 「マトリックス」の監督、ラリー・ウォシャウスキーや、「アバター」「タイタニック」などの監督、ジェームズ・キャメロンなどから肯定的な評価を受けている。

 あらすじを紹介しよう。近未来、「アヴァロン」というVRオンラインゲームが流行している世界。実在のものと同じ武器を用いて戦い、現実で使える紙幣を賞金として手に入れることができるのだが、ゲームから抜け出すことができなくなった「未帰還者」を出すこともあるため、非合法化されている。

 アヴァロンの凄腕プレイヤー「アッシュ」はかつて「ウィザード」と呼ばれるパーティ(グループ)に参加してプレイしていたが、ある事を契機に現在はソロ(単独)でプレイしている。愛犬と暮らす自室とアヴァロンが彼女の全てだった。

 そんな時、アッシュはアヴァロン内で挑発を受ける。それはこのアヴァロンというゲームの裏側を知るクエストの始まりだった……。

 特筆すべきなのはその独特の用語だろう。「ウィザード」「ビショップ」「マーフィー」などの用語は、ゲーム「ウィザードリィ」から取られている。銃器を使用する現代戦であるところや、魔法を使わないところを除けば、アヴァロンのゲームの大まかなルールもウィザードリィに近い。

 押井監督は大のウィザードリィファンとしても知られており、「機動警察パトレイバー2 the MOVIE」の自衛隊バッジシステム(自動警戒管制システム)のハッキングシーンでもウィザードリィの用語が出てくるほどだ。ウィザードリィ好きの諸君にはどちらもぜひ一見をお勧めしたい作品だ。

VRゲームでの個人認証はどうすべきか?

 さて、賞金のかかったVRゲームであればどうしても個人認証は避けられない。作中ではどう描写されているのだろうか?

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