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» 2019年04月18日 07時00分 公開

AIを使うには“疑う力”が欠かせない データサイエンティストがNHK「AIに聞いてみた」に望むこと (1/3)

日本が直面する社会問題について、AI(人工知能)はどのような提言をしたのか――NHK総合の番組「AIに聞いてみた どうすんのよ!? ニッポン」について、データサイエンティストの松本健太郎氏が気になる点を解説する。

[松本健太郎,ITmedia]

 NHK総合で「AIに聞いてみた どうすんのよ!? ニッポン」の第4回が、4月13日に放送されました。NHKが独自開発した人工知能「AIひろし」が、日本が直面する課題についてその解決策を提言する──という番組です。

 今回のテーマは「超未婚社会」。少子化の原因ともいわれている“未婚”というテーマに切り込みます。筆者はこれまで第2回第3回の放送について、データサイエンスの視点で検証記事を書いてきました。

 もはや筆者のソーシャル上のタイムラインでは番組の話題を取り上げているデータサイエンティストはほとんど見られない状態ではありますが、今回も番組内でAI(人工知能)が提言した内容について、データを基に検証していきたいと思います。

 AIは「未婚社会」について、どのような提言を行ったのでしょうか。番組を振り返ってみましょう。

 三菱総合研究所が提供する生活者市場予測システムをベースに、例えば「恋人と余暇を楽しむ」という質問にYESと答えた人が、他のどの質問にYESと答えたのかを調べ、関係が深い質問を線で結んだネットワークを作成します。次に、それぞれの質問に答えた人が1年後に結婚している割合が多ければ赤に、破局した割合が多ければ青に、どちらともいえなければ白に色塗りしていきます。その結果、出来上がったのが男女別の“結婚ネットワーク”です。

AI 結婚ネットワーク(男性)、NHK公式サイトより
AI 結婚ネットワーク(女性)、NHK公式サイトより

 ネットワークを見ると、「動悸や息切れがする」「目が悪い」にYESと答えた項目が赤色に塗られています。ここから「不健康であることと結婚が関係するの?」という切り口で検証が始まります。

 個人的には今回が一番興味深い回でした。筆者の知り合いの中には「ビッグデータから人間が思い浮かばない相関が出たとき、それを仮説として証拠を探したり解釈を考えたりする思考法はアブダクションと呼ばれる。専門家よりリアルなマツコさんのインサイトが、番組でその役目を果たしている」と好意的に評価する識者もいましたが、それには私も全面的に同意します。

 しかし、AIの提言である「不健康が結婚への近道!?」には疑問が残ります。そもそもの証拠の探し方や仮説の立て方に問題があると感じたからです。もしAIが「人間も思い付かない数百万通りの仮説を提言してくれる機械」なら、その中で筋の良い案を見つけて検証し、採択する人間側が「検証力」を磨かなければ、AIは宝の持ち腐れになります。

 「優れた機械も使えなければ意味が無い」という意味において、第4回の放送はAIの可能性と限界を見せてくれました。だから一番興味深い回だったのです。

 筆者が抱いた違和感について、具体的にデータを用いて説明したいと思います。

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