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「自分だけのキャラを作りたい」 AIで美少女を「無限生成」、若きオタクエンジニアの挑戦(3/4 ページ)

» 2019年04月26日 07時00分 公開

1万人が80万体の美少女を生成……なのに突然のサービス終了

photo 金陽華さん。中学2年生のころからアニメを観るために日本語を勉強したという

 こうして誕生したβ版Crypkoは大反響を呼んだ。約3カ月間で1万人以上のユーザーが利用し、80万体を超えるキャラクターが生成された。個人が開発したサービスということで、宣伝力が限られている上、仮想通貨ウォレットの拡張機能をWebブラウザにインストールする必要があるなど、ゲームを始めるのに少なからず手間がかかることを考えると、すさまじい反響だ。

 金さん、朱さんが特に驚いたのは、ヘビーユーザーの多さだという。ユーザー1人当たりのキャラクター所有数は平均100体を超え、中には1000体以上所有するユーザーも数名いた。ネット上では、当時のCrypkoプレーヤーから「レベルの高さに感動」「ゲームとして面白い」など熱い感想の声も上がっている。Crypkoで生成されたキャラクターを題材にイラストが描かれることもあり、金さんもこうした二次創作作品にハマったという。朱さんは「いろいろな制限がある中で、理想のかわいい女の子を作れることに熱中した方もいるのではないでしょうか」と分析する。

 こうした反響にもかかわらず、Crypkoはリリースから数カ月間で公開を終了した。その理由は「開発メンバーの大学卒業・就職」と「ブロックチェーンの利用に限界を感じたこと」の2点だった。

 β版のCrypkoをリリースした当時、金さんと朱さんは大学卒業を控えていた。昨秋にはPFN入社が決まっており(金さんは9月、朱さんは11月入社)、同社のアニメ関係の事業に携わる予定だったという。

photo 朱華春さん。金さんと同じく中学時代から日本のアニメにハマった。好きな作品は「リトルバスターズ!」

 それでも当初は「正式版Crypko」をリリースする予定だったが、β版の反響を見て「これで終わりたくない」とサービスの新たな方向性を模索し始めていた。背景には、仮想通貨の価値が乱高下するというリスクや、イーサリアムを利用する際にかかる手数料(Gas)の高騰もあり、ユーザーの参入障壁の高さが最大のネックだったという。

 サービスを広く展開することを考えると、ユーザーがゲームに参加するために仮想通貨を購入するというのはハードルが高い――金さん、朱さんらはそう考えた。

 CrypkoはPFNの事業になったこともあり、法人向けのサービスに転換。ブロックチェーン技術の活用は、キャラクターの独自性を保証する働きにとどめることにした。その代わり深層学習の精度向上に注力し、より高品質なキャラクター生成が可能に。画像の解像度を向上させた他、男性キャラクターの生成やパーツの指定にも対応した。

開発体制は「爆速」に 趣味が入社後の仕事になった

 金さんと朱さんは4月現在、入社したPFNでCrypkoの開発を続けている。企業に所属したことで、開発環境は学生時代からどう変わったのか――。聞いてみると、特に変化が大きいのは、リソースが潤沢にあることだという。

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