IT基礎英語
Securityは何を守る?
ITmediaで海外情報を長年翻訳している鈴木聖子さんが、IT関連記事に登場する英文の中からよく見かける単語や気になった表現について紹介するコーナー。第2回は「security」。
トランプ大統領の来日に伴うsecurityはものすごかった。警護車両が何台も何台も連なるものものしい行列と、交通封鎖、ヘリの爆音。大統領が相撲観戦に訪れた国技館では、観客にも力士たちにも相当の影響が出たらしい。
The presidential sumo visit prompted high security, with long queues forming at metal detectors in the blazing heat before the tournament kicked off.
大統領の相撲観戦のために厳戒態勢が敷かれ、開演前には猛暑の中で、金属探知機の前に長い行列ができた(AFP通信)。
さて、この「security」という言葉、要するに何かの安全を守るという単純な意味なんだけれど、日本語にするときは、何をどう守るかによって用語を使い分けなければならない面倒な単語の1つ。今回のように、物理的に安全を守るための人員を配置する場合は「警備」などと訳し、相手が要人の場合は「警護」を使う。
もっと日常的な場面では「安全対策」「防犯」「保安」と表現したり、逆に強権国家による弾圧的なニュアンスを込めて「治安」という言葉を使うこともある。
State security forces launched tear gas and fired rubber bullets while bands of mostly young men threw rocks.
石を投げる若者の集団に対し、国家治安部隊は催涙ガスやゴム弾を浴びせた。(政情不安に陥ったベネズエラ関連のAP通信記事)
一方、サイバー空間でsecurityという用語が出てきた場合、単純に「セキュリティ」と言い換えるのがお約束。「コンピュータの安全対策」としてもよさそうな気もするけれど、この業界はとにかく英単語をカタカナにしただけでそのまま使う習慣が定着してしまっているので、今更変えようとしてもしっくりこない。
ただしサイバー絡みのsecurityでも、例えば合衆国とHuaweiの対立のように国家間の争いが絡む場合は「安全保障」を使うことが多い。United Nations Security Councilは「国連安全保障理事会」、United States Department of Homeland Securityは「米国土安全保障省」が正式名称とされている。
というワケで、securityはどんな日本語を当てはめるかで、雰囲気がガラリと変わる。それでもトランプ大統領警護であれ、コンピュータの安全対策であれ、securityが行き過ぎれば不便な思いをする人が増える性質に変わりはない。国技館は名物の座布団投げを警戒するあまり、退場や処罰までちらつかせて観客を脅したとか。securityとは一体誰のためのものなのか、考えさせられる出来事だった。
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