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» 2019年06月10日 07時00分 公開

「その彼氏、将来性がないよ」「ほら、肩くらいもんでよ」──“セクハラ・パワハラVR”、戦慄の10分間を記者が体験 (1/2)

セクハラ、パワハラを体験できるVRコンテンツをグリーが開発。法人向けに提供している。声を荒げる上司に詰め寄られる場面から始まる“戦慄の10分間”を体験してきた。

[中山明子,ITmedia]

 「もう月末だぞ。売上が達成できなかったらどうするんだ?」「できるかできないかではなく、やるんだよ! 分かったか!」――声を荒らげる上司に詰め寄られる場面で、“部下役”の筆者の身体はこわばる。

photo 上司から「できるかできないかではなく、やるんだよ! 分かったか!」と詰められる=グリー提供

 別の場面では、自分が“上司役”として女性社員を呼び出し、取引先との接待へ参加するよう迫る。先約があるという女性に対し、「彼氏とデート?」「仕事の予定だよ? そういう理解のない男は、将来性がないよ」と心無い言葉を発してしまう。

 VR(仮想現実)空間で、こうした体験ができる「セクハラ・パワハラ体験VR」をグリーが開発した。法人向けにコンプライアンス研修のコンテンツとして提供し、直近1年間で約40社から問い合わせがあったという。仕掛け人であるグリーの岩永龍法さん(XR事業開発部 事業開発チーム)に開発の狙い、舞台裏を聞いた。

photo 主人公(体験者)は加害者の立場にもなり、女性社員に「彼氏とデート?」「仕事の予定だよ? そういう理解のない男は、将来性がないよ」と心無い言葉を発してしまう=グリー提供

「あの子、かわいいよね……」 罪悪感で胸がいっぱいに

 セクハラ・パワハラ体験VRは、体験者がセクハラ・パワハラの被害者と加害者それぞれの立場を体験できるコンテンツだ。実際の職場で起こりそうなハラスメントや会計不正など、コンプライアンスに違反する事例を、違和感なく盛り込むことを心掛けたという。

 上司に詰められた主人公(体験者)は、どうにかして売上目標を達成しようと、なじみの取引先に相談。すると、取引先の男性から応接室でこう囁かれる。

 「あの子、かわいいよね……」

 グレーな取引に応じる見返りとして、自社の女性社員を呼んだ接待を開くように求められるのだ。取引先からの下心丸出しなリクエストに思わず鳥肌が立った。鼻の下が伸びた表情が、おぞましさに拍車を掛ける。しかし、取引先の要望に応えるためにはなりふり構っていられない。女性社員を説得し、迎えた接待の場。

 「ほら、肩くらいもんでよ!」

 取引先の男性が、隣に座らせた女性社員とスキンシップをとりたがる。あまりの公私混同ぶりに嫌悪感をおぼえたが、上司からの叱責を避けるためにも、どうしてもこの場を成功させたい。主人公は女性社員にこう告げて、自らセクハラを促してしまう。

photo 女性社員とスキンシップをとりたがる取引先の男性=グリー提供

 「この子、今フリーらしいので、朝までご自由にお楽しみください」

 信じ難い一言とともに女性社員を残して一人帰路に着く。申し訳なさを感じつつも「これで良かったんだ」と自分に言い聞かせるが、その末路は……。

 筆者は冷や汗をにじませながら、ヘッドマウントディスプレイを外した。眼前で繰り広げられた動画は10分ほどだったが、上司に大声で詰め寄られるシーンはのけぞってしまうほどの恐怖を感じ、女性社員から恨めしげな視線を投げかけられるシーンは罪悪感で胸が締め付けられた。

 岩永さんは「研修の必要性を理解してもらうために、まず“修羅場”を経験してもらいます」と語る。研修の現場では、座学を始める前にこうしたVRコンテンツを活用。リアルな事例を体験してもらうことで、参加者の意欲を高められるという。

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