ITmedia NEWS >

Facebookの仮想通貨「Libra」の価値は何か 日本の法的解釈は(1/2 ページ)

» 2019年06月26日 12時18分 公開
[井上輝一ITmedia]

 日本ブロックチェーン協会は6月24日、米Facebookが2020年に提供予定の仮想通貨「Libra」(リブラ)に関する勉強会を開催した。Libraは、Facebookを含む二十数社からなるコンソーシアムが大規模に運営することもあり、大きな注目を集めている。勉強会ではブロックチェーン事業者や弁護士などが登壇し、Libraの概要や仕組み、日本国内で展開する上での法的解釈などについて解説した。

米Facebookの仮想通貨「Libra」のコンソーシアムメンバー

Libraは「プログラマブルなステーブルコイン」

 Libraは、Facebookが開発したブロックチェーン技術を採用する仮想通貨。専用のスマートフォンアプリ(iOS/Android)の他、Facebook Messenger、WhatsAppなどで利用可能になる見込み。

LayerXの福島良典社長

 ブロックチェーン関連事業を行うLayerXの福島良典社長(Gunosy創業者)は、「Libraは強力なコンソーシアムメンバーのサービスを経済圏とするようなステーブルコインだ。ステーブルコインでありながら、従来、人の確認を必要としていた金銭のやりとりを自動化し、やりとりのコストを下げられるスマートコントラクトを実装できる」と説明する。

 ステーブルコインは名前の通り、仮想通貨の中でも価格が安定する仕組みがあるコインのこと。仮想通貨は価格が不安定になりがちだが、例えば1通貨1米ドルの価値を保証する「TrueUSD」などはステーブルコインに当たる。

 Libraは、複数の法定通貨や資産でその価値を裏付ける「通貨バスケット制」を採用する。Libraの場合、ユーザーが払い込んだ法定通貨を、100社以上のメンバーで構成される組織「Libra協会」が信託会社に委託し、銀行預金や短期国債など各種資産へ分散投資する。信託会社が運用する各種資産の価値と割合から、1Libraの価値が決定される。

 市場での売買でLibraの価値が変動することもあるが、Libra協会によるLibraの発行と償却額が上記の通貨バスケット連動で決まることから、ビットコインのような激しい価格変動はLibraでは起きづらい。

Libra公式サイトによるLibra協会の説明

 発行体が不正操作をする恐れがあるため、通貨バスケットによる価格決定には透明性が求められる。「Libraのホワイトペーパーによれば、通貨バスケットを運用する信託会社に監査を定期的に入れることで、人間的な監視にはなるが不正や暴走を防ぐようだ」と福島氏は指摘している。

 Libraはステーブルでありながら「仮想通貨の一般的なセキュリティや海外送金の低コスト化といった特徴を備えつつ、コンソーシアムメンバーのサービスを将来的に利用できることに価値がある」福島氏は説明する。

強力なコンソーシアムメンバーによるLibra経済圏の可能性

 Libraに参画する企業は、Visa、Mastercard、PayPal、Spotify、Uber、Lyftなどそうそうたるメンバーだ。これら企業のサービスが今後Libra払いで提供されるようになれば、これまで金融サービスを受けられなかった人でも、スマートコントラクトを通して関係する各種サービスを利用できるようになる可能性がある。福島氏は、「(ポイントサービスが行っているような)Libraの経済圏ができるのではないか」と予測する。

 また、Libraは専用のプログラミング言語「Move」によってスマートコントラクトを実装できる。しかし、「計算リソースの貸し借り」や「保存容量の貸し借り」など汎用的な目的でプログラムを実装できる仮想通貨「イーサリアム」とは違い、「LibraはあくまでLibra通貨の支払いやすさ、金銭のやりとりの自動化に特化している」(福島氏)という。

 例えば、請求書が手元に届いてからその額面を払う「請求書払い」も、スマートコントラクトなら人が確認する工程を自動化できる。

 これらをまとめると、福島氏が考えるLibraの価値は、(1)ステーブルコインであること、(2)これまで金融サービスを受けられなかった人もLibraで受けられるようになる可能性があること、(3)コンソーシアムメンバーのサービスをLibraで利用できるようになる可能性があること、(4)スマートコントラクトによって金銭を低コストで素早くやりとりできること──になる。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.