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Facebookの仮想通貨「Libra」の価値は何か 日本の法的解釈は(2/2 ページ)

» 2019年06月26日 12時18分 公開
[井上輝一ITmedia]
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法的に「仮想通貨」に当たるか

 次に、仮想通貨や金融商品取引法に詳しい斎藤創弁護士が、Libraの法的解釈について説明した。

 「ステーブルコインにも種類があり、ものによっては仮想通貨に当たらないこともある。しかし、Libraは仮想通貨に当たるだろう」と斎藤弁護士は分析する。

仮想通貨や金融商品取引法に詳しい斎藤創弁護士

 斎藤弁護士によると、日本の仮想通貨法(資金決済に関する法律第三章の二 仮想通貨)において、仮想通貨は(1)電磁的な財産価値であり、(2)電磁的に移転可能であり、(3)不特定多数に対して使用可能または不特定多数間で他の仮想通貨と交換可能であり、(4)「通貨建資産」でないもの─―と定義される。

 「Libraはこの1〜3には該当するだろう。では4の通貨建資産はどうだろうか」(斎藤弁護士)

 通貨建資産とは、「本邦通貨(日本円)もしくは外国通貨で表示され、または本邦通貨もしくは外国通貨で債務の履行や払い戻し、その他これらに準ずるものが行われる資産」を指すと、斎藤弁護士は解説する。

 例えば、先の例に上げたTrue USDは1通貨1米ドルへの償還を約束しているため、通貨建資産に当たり、仮想通貨法上の仮想通貨には当たらない。

 しかし、福島社長が解説したようにLibraの価格は特定の通貨とはひも付かず、通貨バスケットで決定される。つまり、通貨建資産の定義である「本邦通貨もしくは外国通貨で表示」や「本邦通貨もしくは外国通貨での債務履行や払い戻し」には当たらないため仮想通貨といえる、というのが斎藤弁護士の意見だ。

日本国内で取り扱えるか

 Libraが法律上の「仮想通貨」に該当する場合、日本国内で取り扱いたい業者は金融庁から認可を受ける必要がある。

 いま国内の仮想通貨取引所が扱う各種仮想通貨は、2017年末までに各取引所が取り扱いを始めたもの。しかし、18年1月にコインチェックが巨額の仮想通貨流出事件を起こして以来、金融庁はチェック体制を厳格化。以来、国内取引所の新規コイン取り扱いは1件も認められていないという。

 斎藤弁護士は、「金融商品取引法の有価証券に当たるかも議論が必要」という。

 「Libraは通貨バスケットや公債に投資し、通貨や公債の変動で利益を得るファンドだという見方もできなくはない。この見方であれば有価証券となる」(同)

 Libraは、ユーザーから預かった資産を分散投資して運用するため、資産は黒字運用になると思われる。しかし、投資で得られた利益は事業での利用と投資家(コンソーシアムメンバーの一部)への還元に利用されるため、ユーザーに利子が配当されることはない。もしユーザーに利子配当があれば、日本でも米国でも有価証券として扱われる可能性が高い。

 これらのことから、「変動リスクのみであれば有価証券ではないと考えていいのではないか」と斎藤弁護士は考える。

 もしLibraが通貨建資産に当たるなら、仮想通貨法や金商法ではなく、銀行法や資金決済法での「為替取引」による扱いになる可能性もあるという。Libraの取り扱いの形態によっては「前払式支払い手段」に当たる可能性もあり、「日本でLibraを扱うのであれば、これら各種法律とよく照らし合わせて検討しなければならない」と斎藤弁護士は指摘。

 「新規コインの金融庁チェックは厳しいが、Libraのコンソーシアムメンバーが大企業ばかりという事情も鑑みると承認される可能性はある。他の法律の規制と比べても、仮想通貨法上の“仮想通貨”とするのが扱いやすいのではないか」(斎藤弁護士)

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