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「僕と契約してデータサイエンティストになってよ!」 分析少女ありさ☆アリスの悲劇マスクド・アナライズのAIベンチャー場外乱闘!(2/4 ページ)

» 2019年06月27日 07時00分 公開

第二章:転職

 まるで前世で魔法少女をスカウトしていたかのような流暢(りゅうちょう)な説明です。将来や仕事に不安を抱えるありささんは、さらに個別相談を希望します。

ありさ「本当に3カ月でデータサイエンティストになれるんですか?」

ハチュ「(会社をやめてフルタイムで学べば)なれますよ!」

ありさ「転職先も紹介してくれますか?」

ハチュ「(条件は二の次で)いくらでもありますよ!」

ありさ「授業料は結構高いですよね」

ハチュ「(諸々の条件をクリアすれば)全額返金します!」

ありさ「ITやAIはよく分からない文系大卒ですが、大丈夫ですか?」

ハチュ「(とりあえず頭数が必要なので)大丈夫です!」

ありさ「やりがいのある仕事ですか?」

ハチュ「もちろんです(個人の感想です)」

 若干すれ違いがあるように感じますが、「説明を省略しただけ」「聞かれなければ答えない」という考えは、社会人生活ではよくあることです。こうしてありささんはスクールと契約し、会社を退職。3カ月間のOJT(On-the-Job Training)と座学を済ませ、スクールから紹介されたIT企業に転職し、晴れてデータサイエンティストになれました。そもそも3カ月でなれるのかという疑問は残りますが、厳格な資格は不要なので問題ないのでしょう。

 新たなキャリアを踏み出したありささんは、自宅から遠く離れた自動車工場に派遣され、常駐することになりました。元スクールの担当者で、現在は転職先で上司の立場になったハチュべえさんに指示されたからです。ありささんは都内の勤務地を希望しましたが、「いまは製造業向けの仕事が中心だから」と押し切られた形です。

第三章:疑惑

 慣れない土地で新たな仕事を始めたありささんをフォローするのは、頼れる先輩のマミルさんです。しかしマミルさんは3話……ではなく3週間で会社に来なくなりました。クビになったわけではなく、音信不通によるフィナーレでした。

 マミルさんも、ありささんと同じく外部の会社から派遣されていました。そういえば初めて会ったときに何も怖くなさそうな目をしていたなと思い出すものの、ありささんはまだ自分が置かれた状況のおかしさに気付いていません。

 そんなある日、慣れない場所で孤独に働くありささんは、上司のハチュべえさんと面談を行います。

ありさ「これがデータサイエンティストの仕事なんですか?」

ハチュ「もちろん。君は自動運転の開発に関わっているんだよ」

ありさ「画像内の自動車や人、自転車をポチポチ選択するだけなのに?」

ハチュ「『アノテーション』は立派なAIの仕事だよ」

ありさ「こういう単純作業は人間がやらないといけないの?」

ハチュ「自動で行うツールもあるけど、精度に問題があるからね」

ありさ「別の会社にお願いしてもいいんじゃない?」

ハチュ「研究開発に使うデータは外部に持ち出せないから」

ありさ「あと支給されたPCのスペックが低すぎるんだけど」

ハチュ「それを工夫で解決するのがエンジニアに求められるスキルだよ」

ありさ「私はずっとこの作業をするの?」

ハチュ「不満があるなら、君に向いた仕事に配置転換しようか」

契約 アノテーション

 AIの開発やデータ分析において、AIの学習用データを作成する作業を「アノテーション」(補足:あるデータに対して関連する情報を注釈として付与すること)と呼びます。ありささんは、クルマに搭載したカメラに周囲の環境を認識させるための学習用データを作成しています。

 学習には大量のデータが必要なので、何万枚もの画像で同じ作業を繰り返します。もちろんこれらを自動で行うツールもありますが、さまざまな事情から手作業で行っている場合もあるようです。

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