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マルはワル? malwareと悪意の関係IT基礎英語

» 2019年07月01日 07時00分 公開
[鈴木聖子ITmedia]

 オーストラリアの高校で、生徒たちのテストの採点を見せてもらったことがある。びっくりしたのは、どの答案もバツ印やチェックマークばかりが並び、マル印がほとんどないことだった。そんなに出来が悪いの?と思ったのだけれど、実はあちらの学校では、正解ではなく間違った箇所にマル印を付けるのだと、この時に知った。

 だからというわけでは全然ないのだが、英語で「mal」という接頭語は悪い事や物を意味する。「malicious」といえば「悪意がある」の意味。malicious softwear、つまり悪意のあるソフトウェアは「malware(マルウェア)」と呼ばれ、ユーザーを妨害したりマルウェアに感染させたりする悪い広告(advertising)は「malvertising」と呼ばれる。

 ただ、日本語で「マルウェア」という言葉は、いまひとつ馴染みが薄い。マスコミでも一般紙はあまりこの言葉を使わず、「コンピューターウイルス」と言い換える新聞が多い。確かにウイルス(virus)の方がイメージがわきやすいし、マルという語感は日本人にとって、どうも悪そうな感じがしない。なので私自身も、IT系のメディアでは「マルウェア」、一般メディアでは新聞にならって「ウイルス」と使い分けている。

 厳密にいうと、malwareとvirusの意味は違う。malwareとは、いろんな悪さをするプログラムの総称のこと。それがどんな風に感染してどんな悪さをするかによって、virusやワーム(worm)、トロイの木馬(trojan horse)、バックドア(backdoor)などに分類される。だからmalwareをウイルスと翻訳する時は、いや実はそこまで限定しているわけじゃく、本当は不正確なんだけれど……と心の中で言い訳している。

 maliciousといえば、米国土安全保障省は最近、「Chinese Malicious Cyber Activity(中国の悪意のあるサイバー活動)」に関する情報を公開し、悪意のあるサイバー活動に中国政府が関与したと断言した。米政府が国家安全保障を理由に中国Huaweiとの取引禁止を命じたのも、そうした流れの一環だった。

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 ところがそこまで言い切っておきながら、禁止はやっぱり緩めることにしたらしい

At the request of our High Tech companies, and President Xi,I agreed to allow Chinese company Huawei to buy product from them which will not impact our National Security. (トランプ大統領のTwitter(*2)より)

われわれのハイテク企業と習主席の要請により、われわれの国家安全保障に影響しない製品を、中国企業のファーウェイが購入するのを許すことにした。

 悪意や善意というのは結局のところ、主観でしかない。だから政治の都合で簡単に変えられるらしい。でもmalwareはプログラム。一度放たれてしまったら、そんな政治判断はしてくれないのでご用心を。

photo トランプ米大統領のツイート

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