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「成果を生み出すデータ分析組織」はここが違う リクルートのマネジメント術これからのAIの話をしよう(マネジメント編)(2/3 ページ)

» 2019年07月25日 07時00分 公開
[松本健太郎ITmedia]

「丁寧な議論」を大切に

石川さん

 石川さんは、事業部の期待値をコントロールするには「丁寧な議論が大切です」と強調します。「そもそも事業部がどのような課題に向き合っていて、それを改善すればどれくらいの効果が見込めるかを、最初の段階で一緒に考えていきます」(石川さん)

 また、技術に詳しくない人にも伝わるような分かりやすい説明を心がけているといいます。「論文に書いてあるこのアルゴリズムが課題解決に合致します、と言っても当然通じません」と石川さん。例えば、レコメンデーションシステムの実装を提案するならデモ版を作って実際に使ってもらうなど、動くものを会議に持っていくことも多いようです。

 動くものがないと、よく分からないまま物事が進んでしまうという良くないパターンに陥るそうです。「実はそういう課題じゃなくて、こういう課題を解決したいという風に議論を発展させるためには、動くものが必要なんです」(石川さん)

 石川さんは「エンジニアはプレゼンすることが苦手な人も多いので、そういうときは話すのが得意な人を連れていくのも手だと思います」と笑います。事業部側も新しい技術への目利きを求められるので、両者で歩み寄る姿勢も大事でしょう。

「一人一人が考え、動く」 チーム作りの思想

 ビジネス課題の解決に重きを置く組織では、どのようなメンバーを採用し、チームを作っているのでしょうか。

 意外にも、新卒・中途ともに現時点でのデータサイエンスやコンピュータサイエンスの高度な知識は必要ないそうです。石川さん自身が農学部出身で、コンピュータサイエンスなどの専門知識は後から身に付くと考えているからです。

 答えがない中で多くの仮説を立てなければならない仕事なので、「ビジネス課題の解決に目を向け、自分で考えて動ける人」を集めることを意識しているそうです。

 「新しい技術を扱うため、マネジャーの僕ですら道筋が分からないことがあります。ただ、それは僕が分からないだけで、他の人から良いアイデアが出てくるかもしれません。僕1人で判断するとチーム全体が間違った方向に進んでしまう可能性があるため、現場の一人一人が判断し、動いていけるような場作りを意識しています」(石川さん)

 そうした場作りのために石川さんが心がけているのは、「ジャッジを早くすること」だそうです。「ちょっと来週まで待ってもらえませんか」と返事を先延ばしにすることはせず、スモールスタートで小さいPoCをたくさん回すことを重視しているといいます。実際に手を動かすことで何らかの結果は出せるので、どうせならその結果を基に次につなげたいと石川さんは考えています。泥臭い検証を続けるには、因果(原因と結果)を説明する能力も求められます。

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