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初めての「技術同人誌」作り 「技書博」に出て記者が得たもの(2/3 ページ)

» 2019年08月10日 07時00分 公開
[井上輝一ITmedia]

 技書博は、「エンジニアの登壇を応援する会」という有志のコミュニティーが主催している。コミュニティーの主催者であるariakiさんに、話を聞く機会があった。「エンジニアの登壇や執筆というと、いわゆる『激強エンジニア』のイメージがある。しかしそうでなくても、アウトプットすることでエンジニアは成長できる。アウトプットをためらっている人たちの背中を押したい」と、会の趣旨を話してくれた。

 ちょうど、「これなら書けるかも」というテーマが自分の中にあった。気付けば、PCのディスプレイにはサークル参加申し込み完了の画面が表示されていた。

「GVim」というニッチなテーマ

 書くと決めたテーマは「GVim」だ。私は普段このテキストエディタで記事を執筆している。周囲は「秀丸エディタ」など“一般的”なテキストエディタユーザーが多いため、おそらく、あまり多数派ではない。

普段執筆に用いている「GVim」の環境

 GVimやVimを使っているユーザーも、プログラミングのコードや設定ファイルなどを編集するのに使っているのが一般的ではないだろうか。

 しかし、記者はVimに一度触れて以来、「マウスを使わずキーだけで操作が完了する」というVimの操作体系に魅了されてしまった。

 とはいえ、エディタ以外のアプリケーション操作にはマウスが必須になることから、マウスを捨てられるわけではない。そのため、コマンドライン内で立ち上げるCUIのVimではなく、他のエディタと同様に単独のGUIアプリケーションとして動作するGVimを利用しているというわけだ。

 プログラミングではなく日本語文章の編集に、記者がGVimをどう使っているかをまとめたら、それなりの価値があるのではないか──。テーマを決めた理由にはこういう考えがあったが、それと同時に自身の作業手順をまとめておきたいという理由も大きかった。

書いたことと書ききれなかったこと

 実際に書いた内容には、それほど新規性があるわけではない。読者としては自分のような編集者・記者でVimやGVimに興味を持った人をメインに想定したので、執筆した40ページのうちの大半は操作の入門的な内容になっている。

 少し目新しいことがあるとしたら、GVimでの日本語の校正方法を書いたことだと思う。Vimの「シンタックスハイライト」を用いる方法の序盤まで書いたのだが、正しい単語と間違った単語を定義する辞書を用意する方法は締切までに書ききれなかった。しかし、書いた方法を用いれば、句点や助詞が2回続いたり、カッコの閉じ忘れがあったりというような初歩的なミスは一応防げるはずだ。

本ができた

 そんなこんなで、内容については執筆できた。当然GVimで書いたが、その先の製本過程は初めてのことで全く分からない。

 どうも技術書執筆界隈(かいわい)では、イケてるツールを使ってMarkdown(簡易的なマークアップ言語)から電子書籍のEPUB形式に出力し、さらにPDFへ再変換するという方法が知られているようだ。しかし時間内にツールの利用方法を把握できなかったので、印刷所の栄光が記載している手順に従いながら、Wordで整形後にPDFファイルを出力し、それを入稿した。

針金を使わない「無線綴じ」にすることでわずかに背表紙ができたため、本のタイトルを小さく入れられた

ニッチでも「この本が欲しかったんだよね」と聞いたときのうれしさ

 技書博当日。数日前には台風による荒天が予報されていたが、誰かが願ったのか、晴天に恵まれた。

大田区産業プラザPiO 2階の小展示ホールでイベントが行われた

 本は50部用意した。「正直、用意しすぎたかも」という悪い予感が頭の中をよぎらなかったこともない。1部500円に設定した。

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