――マスクドさんのおっしゃられたイノベーションとオペレーションの話は非常に重要だと思います。この2つを切り分けられる人材は不足していますよね。AIをプロダクトに実装できる人だけでなく、AIで何ができるかを描ける人も少ない印象です。
濱田:みんな「AIを使って」と言われると、難しく考えちゃうんです。GoogleのAutoMLやDialogflowみたいに簡単に実装できるサービスは既にあるので、それを使えば今までやれなかったことが簡単にできるようになります。それらを使うのにプログラミングの知識が必要かと問われれば、そうではないでしょう。みんな真面目に勉強しちゃうから、難しいと感じるんです。
私はよく料理に例えます。おいしいパスタを作ろうというとき、小麦粉の選定から始めるのか、乾麺で間に合わせるのか。乾麺はその辺に売っているじゃないですか。それで済ませれば良いのに、気付いたら小麦粉の研究を始めてしまう人がいます。そこがもったいないなと。やりたいことが今ある材料だけでできないときになってから、小麦粉の研究をすれば良いのにと思ってしまいます。
あと、動画を見て勉強するのも良いと思います。僕自身も多少はAIをやってきましたが、動画でAIの説明を見ると分かりやすかったのでお勧めです。
マスクド:料理も文字のレシピより動画サイトが人気ですからね。
濱田:同じですね(笑)。
――メルカリにはSlack上で社員のサポートをする「AI社員のHISASHIくん」がいますよね。プログラミング未経験のsaayaさんがDialogflowを利用して作っていました。これは濱田さんがいうところの「乾麺パスタ」の例でしょうか。
濱田:こういうツールを使いこなす人はみんなエンジニアと呼んで良いと思います。( Webサービス同士を連携できる)IFTTT(イフト)が分かりやすい例でしょう。プログラミングじゃないけど、エンジニアリングができる。(HISASHIくんのような)チャットbotはGoogleのDialogflowを使うだけで実現しています。プログラムを書かなくてもいろいろなことが実現する世の中になってきていると思いますね。
マスクド:コンビニでレトルトや缶詰の食材を買ってきて、一手間加えておいしくなりました的な。
濱田:そうそう。そういうのを積極的にやっていくべきです。
マスクド:自分の仕事を楽にするのかをもう少しどん欲に考えて良いかもしれませんね。
――AIでアレができるコレができると全体の絵を描ける人が不足しています。マスクドさんは何か思われているところはありますか。
マスクド:AIへの理解が低すぎるんですよ。AIだから何でも応用できるだろうと誤解がある。クラウドサービスやツールを使って、仕事に落とし込むための発想力が必要です。基本的なリテラシーを学びつつ、どのように自分の仕事に応用するかを考えましょう。それをメモにとって壁打ちしながら、発表するのも良いですし、何かしら昇華させる必要があります。そうすれば実務で使える力が身に付くのではないでしょうか。
濱田:メルカリでは、PM(プロダクトマネジャー)向けのAI研修を実施して、知識レベルの向上と底上げを図っています。AIといっても漠然とし過ぎているので、AIとは何なのか、どんなことができるのか、例えばどんな所に使えるのかなどを学びます。そこからアイデアにたどり着けるようにするんです。
マスクド:「困った!」という場面に遭遇したときに「こういう課題があるなら、こういう解決策があるじゃないか」という引き出しを準備しておくわけですね。
濱田:そうですね、解決策の手段を頭の中に持っておくんです。それがないと発想が今までと同じになりますから。
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