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私たちの「顔情報」はどう守られている? 生体認証のハナシ今さら聞けない「認証」のハナシ(3/5 ページ)

» 2019年08月28日 11時50分 公開
[鳥羽信一ITmedia]

私の知らない誰かが、私の顔を知っているのは気持ち悪い

 生体認証に使われる身体的特徴の中でも「顔」は特別です。顔は基本的に公開されています。あなたのことを知っている人が、あなたの顔を見れば、あなただと識別することができる――顔にはそういう機能があります。

 声や体形も識別に役立ちますが、顔ほど決定的な要素にはならないでしょう。指紋や虹彩などは、肉眼では測定が困難なため、普段の識別には用いません(※2)。

※2:これは現時点の話で、技術発展によって人間の能力が拡張し、顔以外の身体的特徴での個人識別が一般化すれば、その特徴も顔と同様の識別機能を持つようになります。ですので、現時点から全ての身体的特徴データは守っておくべきだと考えます。

 このような機能を持つ顔を認証に使うのであれば、そのデータは守られた形で保管されているべきだと考えます。顔画像そのままを保管するよりも、デジタルデータ化して保管するほうが安全なのです。そして、デジタルデータでの顔認証でも十分な認証精度が出るようになっています。

 NECの顔認証システムNeoFaceも、顔の特徴を数値化して比較・判定する方式で、2017年の米国国立標準技術研究所(NIST)が実施した動画顔認証技術(※3)のベンチマークテストにおいて、認証精度99.2%という成績を収めています。

 とはいえ、デジタル化したデータだとしても、個人情報保護法における個人識別符号にあたります。取得時には利用目的の公表・通知が必要ですし、保管には個人情報とひも付ける以上、適切な取り扱いが必要になります。

※3:動画顔認証技術に対して、静止画顔認証技術があります。静止画顔認証技術では対象となる顔が静止していなければならないのに対し、動画顔認証技術は動いている顔でも認証できます。

顔画像データが保管されている身分証明証

 一方で、ICカード化された運転免許証やパスポート、マイナンバーカードには、券面や顔写真貼り付けページにある顔写真の画像が保管されています。これは偽造証明書の利用防止のための措置です。

 パスポートを用いた出入国審査では、ICチップ内の顔画像を読み取って画面に出力し、貼付の顔写真との一致していることを入国審査官が肉眼で確認してから、偽造されたものでないかを判定します。そして、本人の実際の顔とも見比べて本人確認するのです。顔写真は貼り換えられても、ICチップ内のデータ書き換えは困難なことを利用した運用です。

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