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私たちの「顔情報」はどう守られている? 生体認証のハナシ今さら聞けない「認証」のハナシ(5/5 ページ)

» 2019年08月28日 11時50分 公開
[鳥羽信一ITmedia]
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人間の能力の代わりとしての機械

 先ほど紹介した「NISTのベンチマークテストにおけるNeoFaceの認証精度99.2%」というのは十分に高い数値ではありますが、100%ではありません。サングラスやマスクなどで顔の大部分を覆っていると認証できなかったり、双子だと本人でなくても認証してしまったりという、弱点も克服できていません。

 しかし、これは人間の肉眼でも同様です。人間も写真と見比べて、100%本人だと判定できるわけではありません。顔を覆っている人には外すように依頼しますし、一卵性双生児を見分けるのは困難でしょう。

 顔認証は、精度においては少なくとも人間と同程度の性能を担保しながら、高速で手間がかからないという効率面に優位性を持つ認証方式だと考えます。

新たに気付かされた生体認証のメリット

 最後に、医療分野におけるNECの取り組みを見て生体認証の新たなメリットに気付いたので、その内容を紹介します。

 まず、意識をなくすようなことが起きた際に、どのような医療や生活サポートを受けたいのかをあらかじめ登録しておきます。実際に本人の意識がなくなり救急医療が必要になった際には、本人の身体的特徴を使って生体認証を行い、事前登録しておいた本人の意思を確認した上で医療・生活サポートを行うという仕組みです。

 「意識がないときに指紋などを使って認証されてしまう」ことは生体認証のデメリットの一つですが、それを逆手にとって「意識がないときでも認証できる」ことに着目し、実用化した取り組みです。取り扱いに注意すべき点もありますが、「意識がないときの認証」を考えるきっかけとなったので紹介しました。

 今回は、生体認証におけるデータの登録・保管について、顔認証を中心にまとめました。これで本人認証に使われる知識・所有物・生体の「認証の3要素」について、一通り紹介できたかと思います。

 次回からは、認証の3要素以外の認証要素や、認証の周辺にある技術などを紹介します。

著者紹介:鳥羽信一(とば・しんいち)

業務用に「トークンレス・ワンタイムパスワード」を中心とした認証ソリューションを提供する認証製品「PassLogic」や、一般向けにパスワード管理アプリ「PassClip」を提供する認証セキュリティ専門企業、パスロジにてマーケティングを担当。

日常生活やビジネスにおける「認証」の課題は、サービス提供者側だけでなく、利用者も正しい知識を持って対策することで解決に近づくと考え、「認証」に関する知識や情報をわかりやすく、カジュアルに伝える情報サイト「せぐなべ」を運営しています。

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