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» 2019年08月30日 18時31分 公開

「パブリック」と「プライベート」、2つのクラウドの垣根があいまいに? (1/2)

[谷川耕一,ITmedia]

 パブリッククラウド、プライベートクラウド、SaaS、PaaS、IaaS、オンプレミス……。クラウドコンピュータはITシステムやアプリケーションを動かす環境として当たり前の存在だが、さまざまな種類があって分かりにくい。よくある分類の1つがIaaS(Infrastructure as a Service)、PasS(Platform as a Service)、SaaS(Software as a Service)だ。

 IaaSは、ITシステムを稼働させるために必要なサーバやストレージ、ネットワークなどのリソースをインターネット上のサービスとしてダイナミックに提供するものだ。PasSはアプリケーションを実行するための開発環境やプラットフォームを提供し、SaaSはソフトウェアそのものをインターネット越しに提供する。IaaSでは仮想化技術が採用されており、柔軟性があることが特徴。しかしながら、ベアメタルと呼ばれる仮想化のないシングルテナントのサーバをインターネット越しに提供するものもある。

「オフプレミスにプライベートクラウドを置いて利用する」ということ

 もう1つのクラウドの分類にパブリッククラウド、プライベートクラウドがある。基本的にパブリッククラウドとは、クラウドベンダーがインターネット越しにIaaS、PaaS、SaaSを提供するものだ。パブリッククラウドでは、利用者がアプリケーションを動かすためのハードウェアなどを用意し所有する必要はない。前出のベアメタル型のIaaSで利用者がITリソースを専有するとしても、ハードウェアを所有しているのはクラウドベンダーだ。

 一方、プライベートクラウドでは社内やデータセンターに利用者が自分たちでITインフラを用意する必要がある。その上で仮想化技術を使いアプリケーション稼働環境を用意する。そのためプライベートクラウドではファイアウォールの内側に自らが所有するITリソースを置き、その上でアプリケーションを動かすことになるのが基本だ。このように自社で場所を確保しITシステムを運用する環境のことを、オンプレミス(On-premises)と呼ぶこともある。一方でインターネット越しに提供されるパブリッククラウド環境は、オフプレミス(Off-premises)とも呼ばれる。とはいえオフプレミスという呼び方は市場にあまり定着していないかもしれない。

 プライベートクラウドは自前の環境に構築され、ユーザーが運用し管理するのが基本だ。そのプライベートクラウドも、今はさまざまな形態がある。例えばパブリッククラウドの代表であるAmazon Web Services(AWS)には、「Amazon Virtual Private Cloud(Amazon VPC)」という仕組みがある。これはAWSのパブリッククラウドの中に、論理的に分離されたセクションを用意し利用するものだ。

 エンタープライズ用途でAWSのクラウドを利用しているユーザーの多くが、このAmazon VPCを採用している。さらにAWSのクラウド環境へ接続する専用ネットワークサービスとなる「AWS Direct Connect」も用意されている。Amazon VPCとAWS Direct Connectを組み合わせれば、パブリッククラウドの環境の中に他とは分離したプライベートクラウド環境を構築できるのだ。Microsoft AzureやGoogle Cloud、さらにはIBM Cloud、Oracle Cloudにも、Amazon VPCと同様な仮想プライベートクラウド環境を構築できるサービスがある。AWSの場合と同様、エンタープライズ用途であれば、ほとんどの企業がそれらを利用しているだろう。

 このように、仮想プライベートクラウドはパブリッククラウドの中に仮想的にプライベートクラウド環境を構築することもできる。この環境ではプライベートクラウドであっても、基本的なインフラの運用管理はクラウドベンダーが実施することになる。つまりはクラウドベンダー側のスケジュールで、ハードウェアや仮想化ハイパーバイザーなどへのパッチ適用など、メンテナンス作業が行われることになる。

 ちなみにIBM Cloudの仮想プライベートクラウドでもある「IBM Cloud Dedicated」では、顧客専用のシングルテナント環境をパブリッククラウドの中で専有的に利用できる。その上でCloud Dedicatedでは、運用管理のコントロールをユーザー側で持てるオプションも選択できる。ここまでくると、これをパブリッククラウドのサービスの1つと呼ぶべきかは少し微妙かもしれない。

photo IBMのクラウド・ネイティブ・コンピューティング
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