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日本を変える「テレワーク」

「部下を信頼しないとテレワークはできない」 “性善説のマネジメント”が社員の自律性を育てる理由(1/3 ページ)

» 2019年10月10日 07時00分 公開
[綿谷禎子ITmedia]

 4月に「働き方改革関連法」が施行され、多くの企業が残業時間の削減などを進めている。政府もテレワークの普及・促進などに取り組んでいるが、都内の企業1万社を対象にした調査では、テレワーク導入済の企業は25%にとどまるという結果も出ている(東京都産業労働局、2019年)。

 場所に縛られずに働けるテレワークの恩恵は大きい。特に外回りの多い営業などは、いちいちオフィスに戻る時間を考えると、外出先で作業をしてそのまま次の営業先へ向かうほうが効率が良いだろう。しかし、経営層や管理職の立場からすると「勤怠管理や業績評価が難しそう」「情報漏えいが心配」など、悩みは尽きないだろう。

 音楽配信事業などを行うUSEN-NEXT HOLDINGSは、テレワークに積極的に取り組む企業の一つ。同社は2018年6月に新人事プロジェクト「Work Style Innovation」を始動し、グループ全体の約5000人をコアタイムのないスーパーフレックスタイムとテレワークの対象にした。定時があったこれまでの仕組みを抜本的に変えた形だ。今ではグループ全体の約3割がテレワークを活用しているという。

 同社はなぜここまで大がかりなプロジェクトを全社で展開できたのか。また、テレワークを行う現場ではどんな工夫をしているのか。旗振り役の住谷猛執行役員(コーポレート統括部長)と、テレワークを実践している広報部の滝口未来課長(コーポレート統括部 広報部 PR課)に聞いた。

性善説のマネジメントで「既成概念をぶち壊す」

USEN-NEXT HOLDINGSの住谷猛執行役員

 「日本の多くの企業は、社員を場所と時間で拘束することが働くことだと認識しています。まずはその既成概念を全部ぶち壊そうと思いました」と住谷執行役員。トップダウンで力強く働き方改革を進めるためにコンセプトとして掲げたのが、「場所と時間からの解放」だった。

 テレワークに伴い、ノートPCとスマートフォンを全社員に貸与。会社支給のPCを使い、VPN接続経由で社内ネットワークシステムにアクセスできるようにした。同社はテレワークを希望する社員に対して、業務を行う場所やその利用回数に制限を設けず、社員が積極的にテレワークできる環境を整えた。

 テレワークとの相乗効果が見込めるのが、コアタイムを設けないスーパーフレックスタイムだ。人によっては週休3日勤務も可能で、金曜日は普段よりもオフィスにいる人が少ないという。勤怠は会社支給のPCやスマホアプリを使い、始業時や終業時に各自で打刻する仕組み。勤怠管理を社員に任せるとサボる人が出てこないか心配になりそうなものだが、住谷執行役員は「その疑いこそが、テレワークが浸透しない一因です。私は会社に来なくていいと社員に言っていますよ」と笑う。

 「私たちは性善説のマネジメントでありたいと思っています。時間管理を社員に任せており、マネジャーが監視しなくても、勤務時間をごまかす人やサボる人はいません。マネジメントの目線でいうと、そこが一番大きな転換です。社員が自律的にタイムマネジメントをやり始めれば、生産性は上がると考えています。社員には自分で業務をマネジメントする意識を持って働いてほしいですね」(住谷執行役員)

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