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ドラゴンクエストの「ふっかつのじゅもん」で味わう認証の奥深さ架空世界で「認証」を知る(2/4 ページ)

» 2019年10月22日 07時00分 公開
[朽木海ITmedia]

 唐突だが、連載第1回について思い返してみよう。そこで扱ったのは「ファイナルファンタジーII」に反乱軍の合言葉として登場する「のばら」だ。一般の民衆と反乱軍を見分けるこの「合言葉」は果たしてどのような認証だっただろうか?

 ……そう、「知識認証」だ。

 ドラゴンクエストの中にも重要な役割を果たしている「知識認証」がある。それは「ふっかつのじゅもん」だ。ドラゴンクエストでは王様に冒険の経過を報告すると、「ふっかつのじゅもん」という文字列を受け取ることができる。これを次回の冒険開始時に入力することで、同じ名前、同じパラメータで冒険を再開できるという仕組みだ。

 しかし実際のところ「のばら」のような短い文字列とは違い、20文字もあるランダムな文字列である「ふっかつのじゅもん」をそのまま記憶するのは、普通の人間の脳では難しい。なので、紙にメモすることが当時の通常の運用であった。

 この講義を聞いてきた諸君なら分かると思うが、ここで脳に記憶する「知識認証」から、メモを保管する「所有物認証」への変換が行われており、開発者側も当然、その運用を想定していただろう。

 しかし、当時の解像度の低いアナログテレビでは文字の判読が難しいことも多く、特に「へ」と「べ」と「ぺ」のような判別のしづらい文字をメモし間違え、続きからプレイできなくなることも多かった。

 さらにドラゴンクエストでは20文字だった「ふっかつのじゅもん」だが、ドラゴンクエストII 悪霊の神々では最大52文字にまで拡張されることになる。さすがにこんなに長くなると「じゅもん」の写し間違いも頻発し、「ふっかつのじゅもんが ちがいます」というエラーメッセージを見ることも多くなった。

 その後、ドラゴンクエストIII そして伝説へ…では、カートリッジ内の電池で保存用の電気が供給され、メモリ内で保存する「バッテリーバックアップ」による「ぼうけんのしょ」方式になり、「ふっかつのじゅもん」は利用されなくなった。

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