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「データを他社にも解放」 ヤフー、データ分析ノウハウを販売 企業の商品開発など後押し

» 2019年10月31日 14時00分 公開
[片渕陽平ITmedia]

 ヤフーは10月31日、同社のビッグデータを活用し、企業・自治体の商品開発や課題解決を後押しする「データソリューションサービス」の提供を始めた。消費者の興味関心などを、Webブラウザ上で調査・分析できるツール「DS.INSIGHT」と、個々の企業・自治体の要望に応じてコンサルティングなどを行う「DS.ANALYSIS」を提供する。ヤフーの川邊健太郎社長は「日々自社サービスの改善に使っているデータを他社にも解き放つ」とし、新しい収益の柱に育てる考えを見せる。

photo 左からヤフーの佐々木潔CDO(Chief Data Officer)、川邊健太郎社長

 DS.INSIGHTは(1)消費者の興味関心を可視化する「DS.INSIGHT People」、(2)地域ごとの特性、人の流れを可視化する「DS.INSIGHT Place」という2種類のサービスを用意する。利用料は月額10万円(税別)から。

 前者では、ヤフーのメディア事業のビッグデータ(検索結果など)を基に、人気キーワードランキングといった俯瞰的な情報に加え、特定キーワードと関連性が高い言葉や、性別・年代などで区分した情報を分析する。アンケートを用いた既存の市場調査にありがちな、質問項目を設定する人がイメージできる範囲に調査結果が限定されてしまう──という課題を解消できるという。

 後者では、ヤフーが蓄積した位置情報データに基づき、指定するエリアにいる人々の属性や人口の推移、検索傾向などを分析する。地域の人々の興味関心、地域・スポット間の人の流れの規模などを把握できるといい、街づくりやイベント運営、出店計画の立案などでの活用を見込む。

 一方、DS.ANALYSISは、個々の企業・自治体の要望に応じ、DS.INSIGHTでは提供していないビッグデータも含めた分析や、データの活用を支援するためのコンサルティングを行う。契約内容や料金は個別相談としている。

 サービス開始に当たって、川邊社長は「プライバシー保護が第一」とも強調。顧客企業・自治体に提供するデータは全て統計データで、直接的・間接的に個人として顧客を識別できる情報(パーソナルデータ)は提供しないとしている。

【編集履歴:2019年10月31日午後3時43分 記事の記述を一部変更しました】

photophoto 川邊社長は、PayPayでのビッグデータ活用事例を紹介。Yahoo!検索で、PayPayと一緒に検索されている未導入企業や、地域別にPayPayと一緒に検索される業種を導き出している。これらのデータは、PayPayの営業担当者が加盟店を開拓する際に役立てているという

Yahoo!検索の結果から、三越伊勢丹と“売れるスカート”開発

 ヤフーは2018年2月に、ビッグデータを活用する事業構想「DATA FOREST」を発表。同社がネット検索やECを通じてビッグデータを蓄積し、自社サービスの改善に役立てていたものを、外部企業や自治体に提供し、事業化する方針を打ち出した。これまでに約60の企業・自治体と実証実験を展開。結果を受け、サービス開始に踏み切った。

 同社の佐々木潔CDO(Chief Data Officer)は、実証実験で成果が出た例として、三越伊勢丹との取り組みを紹介。Yahoo!検索のデータから、「抱っこひもをするとポケットが使いにくい」「自転車に乗りにくい」といった、子育て中の女性の服装に関する悩みを抽出し、新製品のロングスカートを開発した。三越伊勢丹が自社サイトで9月25日に発売したところ、「過去一番売り上げたスカートと比較して、初週の販売数は約2.6倍だった」という。

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 川邊社長は「(広告、金融などに続く)新しい収益の柱にする。セキュリティ、プライバシーには配慮した上で、無限の力があるデータを活用し、日本を元気にしたい」と意気込んでいる。

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