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イープラスに聞く、悪徳転売業者を駆逐するまで チケット購入アクセスの「9割占めた」botを徹底排除迷惑bot事件簿(特別編)(3/4 ページ)

» 2019年11月01日 07時00分 公開
[中西一博ITmedia]

「おお、転売サイトが消えた!!」と社内が歓喜

小西 自力では打つ手がない中で、アカマイのBMPの検討を始めた時は、効果が出るか少し半信半疑でした。

中西 実はアカマイ側でもそうでした(笑)。BMPは「ふるまい検知」以外にも複数の要素で、幅広い種類の迷惑botを検知する仕組みを備えてはいるのですが、最も高度なbotを検知する「ふるまい検知+機械学習」の部分は、本来、パスワードリスト型攻撃などを試みる不正ログインbot対策のために拡張、最適化したものです。なので「正直、実環境に入れてみないと分からないけど、とにかくPoC(試用)を提案してみよう」と。

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小西 今回の目的は、リスト型攻撃対策というよりは、主にダミーアカウントでチケットを購入するbotを徹底的に防ぐことでした。後に大きくニュースでも報じられましたが、検知の結果は上々でした。まさに「ふるまい検知」に、狙っていたbotのアクセスがヒットしました。リスト型攻撃に用いられるのと同様の高度な手法で、これまでのさまざまな対策をすり抜けていたことが明らかになった瞬間でもありました。

中西 まず可視化することが重要ですよね。ところで、当時のニュースの見出しになった「9割がbot」というワードですが、先着チケットの9割を不正に購入されていた、という意味では無いんですよね? 誤解されている方も多いと思うので。

小西 はい、取得されたチケットの数ではなく、アクセスの試行数の割合です。もう少し詳しく言うと、botの特性でこの数が実際より水増しに見える傾向もあります。botのアクセスを検知してブロックすると、相手は機械なので成功するまでリトライします。再試行のアクセスを全て遮断した結果、遮断した回数(botによるアクセス)と正常にログインできた回数(人間によるアクセス)が9:1という割合になりました。

中西 その後、BMPの細かいチューニングを繰り返すことで検知精度を上げていき、転売目的のアクセスを根絶していく過程は、以前の記事でも触れました。実際現場で不正行為が目に見えて減っていく実感はありましたか?

小西 検知の網の目を狭めていくと、明らかに大きな転売業者がイープラスのチケット買い占めから撤退していく様子が分かりました。BMPを導入してしばらくすると、長年悩まされていたチケット取得代行を名乗る業者の販売サイトから、イープラスが取り扱っている先行販売チケットが消え、社内では「おお、消えた!!」と声が上がりました。チケット不正転売禁止法施行の影響もあったのか、その不正販売サイトは今年5月に閉鎖されました。

データが導く犯罪行為の立証

中西 チケット不正転売禁止法前にも、悪質な“転売ヤー”が詐欺罪で立件、逮捕されました。イープラスの協力があったとも報じられましたが?

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