授業では次に、Sayaのリアルな表情と会話を実現している技術について、教師から解説がなされた。ビジュアルに関しては、CGでより人間に近いリアルさを実現するため、目や肌などのパーツに細かな工夫がなされていることなどが説明された。自然に会話する技術については、前述のTalk to Sayaについて堀り下げた説明があった。
Talk to Sayaは、声を聞き取ってテキストに変換する「Speech to Text」、返答する文章を音声データに変換する「Text to Speech」、合成音声とCGの口の動きを合わせて表現する「リップシンク」――などの技術を組みあわせたもの。その技術群の中でも、より自然な会話を実現するエンジンとして採用しているのが、日本マイクロソフトのAI「りんな」をベースとした「Rinna Character Platform」だ。
Rinna Character Platformは、Speech to Textでテキスト化したデータの内容を解析し、返答する文章を生成する技術。Sayaが人と会話する際は、Rinna Character Platformが生成した文章をText to Speechで音声データ化し、リップシンクで発話しているのだ。
ただし、カスタマイズが加えられていることから、音声や会話の内容はりんなとは異なり、Saya独自の口調になっていた。そのため、りんながベースになっていることを知って驚く生徒も多かった。ちなみに、今回参加した生徒の3分の1程度が、「LINE」上でりんなとの会話して遊んだ経験があったようだ。
また会場には、Sayaの生みの親である3DCGアーティストのTELYUKA(石川晃之氏、石川友香氏)も登場し、Sayaを制作した経緯について説明した。
その中で石川友香氏は、Sayaを作り出した当初、「Siri」のようなAIエージェントを目指すことは考えていなかったが、「皆さんの役に立つための役割が必要だと考えるようになった」と語った。「おしゃべりや感情などをSayaに覚えさせることで、生活に溶けこみ、友達になったり、生活の手助けをする存在にしていく取り組みを進めている」という。
ただ、生徒が授業でSayaに記憶させたデータは、あくまで授業の中での使用にとどまり、機能向上のための機械学習に用いられるわけではないとした。
鎌倉女学院高の工藤由希教諭によると、同校で使っている情報の教科書の中に「これから発展する技術の課題点について議論する」という内容があり、今回の授業を実施したのはその一環だという。
工藤氏は「今後もSayaを通じて、AIの倫理的課題などについて考える授業を進めていきたい」と意気込んだ。
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