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格ゲーの駆け引きはAIにもできる? 憧れのプロ選手、AI化の可能性も(3/4 ページ)

» 2019年12月06日 07時00分 公開
[西川善司ITmedia]

AIプレイヤーは駆け引きできるのか?

 冒頭でも触れたように、格闘ゲームは相手の行動を先読みしたりする駆け引きの要素があります。例えば、ジャンプ攻撃をすると見せかけて相手にガードさせ、実際は着地後に攻撃せずに相手を投げる――これは「すかし」と呼ばれるテクニックで、いわばフェイント攻撃です。

 他にも、ガード中の相手に近づいて投げ技をにおわせながら、さっと後退して相手の反撃を誘発する「シミー」(Shimmy:振動の意)などもあります。

 こうしたフェイント動作に対して、今述べてきたようなAIは、どういう反応を見せるのでしょうか。「学習レベルが浅いAI」や、「相手の行動を時系列ごとに場合分けして学習できていないAI」は、こうしたフェイントに引っ掛かる可能性が高いでしょう。「攻撃をされそうならガードする」といった状況判断が優先されるからです。

 これらの弱点を克服したAIなら、フェイントも見抜けるようになるかもしれません。サムスピのゴーストは、まだまだこのレベルには達していないようです。

バンナムが披露した「ゼビウス」をプレイするAIロボ

 最近では、ゲームをプレイするAIロボットが家電とIoT機器の見本市「CEATEC 2019」で展示されました。バンダイナムコグループのブースにいたのは、縦スクロールシューティングゲームの名作「ゼビウス」をプレイするAIロボ「Q56」(キューゴロー)です。

ゼビウスをプレイするAIロボ「Q56」(キューゴロー)

 Q56のプレイヤーAIは、米Google傘下のDeepMindが開発したゲームAIのように、「教師なし学習型AI」「強化学習型AI」として開発されています。実際の頭脳は、この白い展示台の下に隠されたデスクトップPCです。Q56が実際にコントローラを操作しているように見えますが、実はコントローラ自体が動いています。実際に展示中のゲーム画面が推論エンジンに入力され、リアルタイムにレバー・ボタン操作を出力しているのです。

2016年にDeepMindが発表したAI。AI自身はゲームのルールを理解していないが、学習回数を重ねることで高得点を生み出す手順を自ら見つけていく

 例えるなら、赤子状態のAIがゼビウスをプレイし、「良い行動」をする度にご褒美を与えられ、より良い動きを学習していく――といった所でしょうか。学習に当たっては、「実際のゲーム画面の15fps単位の画像」(一部処理しやすいように画像を低解像度化・鮮鋭化)を入力情報とし、「ゲーム画面に反応したレバー・ボタン操作」を出力情報としています。

 開発初期の報酬条件は「以前よりも高得点を獲得する」にしていましたが、結果が振るわなかったそうです。そこで「より長い時間生存する」という条件に改めたところ、プレイが急激に洗練されたのだとか。ただ、あまりにうますぎても展示として面白みがないため、CEATECには、時々ミスをしてしまう学習レベルの低いAIをあえて展示したそうです。

 Q56は、ゼビウスのゲームルールを全く理解していません。自分が放ったビーム対空砲(ザッパー)、対地ミサイル弾(プラスター)と敵弾の区別も付いていないというのが興味深いところです。

ちなみに自機が死ぬと、こちらに顔を向けて困った顔をする

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