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「HHKB Professional HYBRID Type-S」速攻レビュー 既存モデルを統合した「真のフラグシップ」(2/2 ページ)

» 2019年12月10日 14時30分 公開
[びあっこITmedia]
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 従来の無線接続モデルでは、Bluetooth 3のみがサポートされており、USB端子は給電専用で入力には利用できなかった。このBluetooth 3がなかなかのくせもので、HHKBに限らず接続性に問題を抱えていることが多かった。無線が安定しない際にUSB接続ができず、非常にもどかしい状態となってしまっていた。

 対してHYBRIDシリーズでは、Bluetooth 4.2を採用している。Bluetooth 3と4は連番のバージョンだが、具体的な通信方式に関してはほぼ別物だ。4系では3系に比べて接続や通信の安定性、消費電力が大幅に改善されている。HYBRIDシリーズはBluetooth 4系の恩恵をしっかり受けており、ペアリングが非常にスムーズで通信も安定している。無線接続のキーボードの問題としてありがちな、入力の取りこぼしなどの動作不具合は今のところ発生していない。

 また、電池が切れてしまった場合や、何らかの環境で無線接続に問題が生じた場合にも、すぐに有線接続に切り替えられるため、プロの道具として安心して利用できる。端子がUSB Type-Cに変更されたのも、スマートフォンやPCでType-Cの採用率が増えていることを考えると、ケーブルの調達しやすさという点で合理的だといえる。

HHKBキーマップ変更ツールでキーマップを変更している様子。変更箇所が分かりやすく青でハイライトされている。こういった細部までともかく気が利いている印象を受ける事が多かった

 以前からHHKBには「DIPスイッチ」によるキー入力のカスタマイズ機能が提供されていたが、できることはFnキーとCtrlキーの入れ替えなど、かなり限定的かつ単純だった。今回初めてキーマップ変更ソフトが登場したため、各キーのカスタマイズが可能になり自由度が大幅に上がった。設定さえすればQWERTY以外のアルファベット配置(Dvorak配列など)が利用できる他、変換・無変換キーや各種修飾キーなどのユースケースによって使用頻度が高いキーの配置をカスタマイズすることで、キーボードがぐっと使いやすくなる。

 その他にも従来のBTモデルで改善された筐体デザインを取り込んだり、Windowsモード/Macモードの切り替えが従来のDIPスイッチでなくキーコンビネーションで変更できるようになったりと、細かい改善が数多く施されており、「気が利いてるな」と感じる部分が多かった。同時に従来モデルで気掛かりだった点もかなり解消され、全体的にモダンなHHKBになったと感じた。

HYBRID Type-S(左)とJP(右)の底面の比較。JPではゴム足が小さく、奥側の脚は簡易的なプラスチックの突起だったが、HYBRID Type-SはBTから継承した大きめのゴム足を手前側と奥側両方に備えており安定感が高まった(写真のJPについている透明なゴム足は筆者が追加したもの)
HYBRID Type-S(左)とJP(右)の側面の比較。全体的に丸みを帯びたJPに対して、HYBRID Type-Sではエッジを立てるところは立てるようなメリハリあるデザインに仕上げられている

 一方で、気になる点もないわけではない。

 一つは節電仕様だ。よくあるBluetooth接続のキーボードでは、数分入力がない場合にスリープ状態に入り、再度キー入力があった場合に復帰・再接続する仕様が多い。一方HYBRIDシリーズは30分間操作がない状態が続くと電源オフとなり、再度入力するためには本体奥にある電源スイッチを2秒長押しして電源を再投入しないといけない。本体裏面のDIPスイッチのSW6をオンにすることでこの省電力設定は無効化できるが、その分電池の消耗は早くなるとしている。また、有線での接続時には省電力設定は働かないため、30分間操作がなくても接続が切れることはない。

【追記:2020年11月25日午前11時 省電力設定を無効化する方法について追記しました】

 Bluetooth接続のキーボードを利用したことがある人ほど混乱しそうだが、この仕様にはHHKB特有の構造が関わっているかもしれない。HHKBのキースイッチ構造である静電容量無接点方式は、状態の読み取りにプロセッサによる処理が欠かせない。このため、節電状態でキー入力を検出する方法がなく、やむなくこのような仕様にしていると予想される。

 ただ、電源がオフになるまで30分と比較的長い時間が設定されているため、日常的な使用ではあまり気にならないかもしれない。

 他に気になる点は、コンパクトになったとはいえ相変わらず存在感抜群の電池ボックスや、キーマップ変更ツールがWindowsのみの提供であること、Macの中では最新のmacOS CatalinaでないとBluetooth接続で正常に動作しないなど、挙げようと思えば挙げられるのだが、影響としては比較的軽微な範囲に収まっており「今後に期待」といったところだ。

フラグシップにふさわしい完成度、初めてのHHKBにも乗り換えにも

 HHKBは、「プログラマーが生涯使える理想的なキーボード」という設計思想を守り、長年に渡ってユーザーから支持されてきた。そんなデザインを維持しつつも、Type-Sスイッチや無線接続など、時代に即したアップデートを重ねて来ている。

 HYBRID Type-Sは、分岐してしまっていた従来のフラグシップモデルの特徴を兼ね備えつつ、前モデルの無線接続の安定性の問題もクリアするなど、派手ではないが細部にまで気を配ったモダンなキーボードだ。ここ数年のアップデートの集大成としては非常に完成度の高いモデルといえる。

 HHKB Professional HYBRIDは2万7500円、HHKB Professional HYBRID Type-Sは3万2000円(いずれも税別)と決して安い製品ではないが、キーボードはなんと言っても長く使えて長く触ることになるものなので、投資対効果が大きい。仕事などでヘビーに文字を入力する方なら、簡単に元は取れるだろう。

 HYBRID Type-Sは、完成度が高くカスタマイズ性も充実しており、ストレスになる要素がとにかく少ない。HHKBに興味がある人にも、従来機種を使っている人にもおすすめしやすい一品だ。

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