クリプトン・フューチャー・メディア(CFM)は12月25日、自社製の歌声合成ソフト「Piapro Studio」専用の音源「初音ミク NT(ニュータイプ)」を2020年8月下旬に発売すると発表した。従来の初音ミクはヤマハが開発した歌声合成ソフト「VOCALOID」向けの音源として販売されてきたが、初音ミク NTはVOCALOIDでは使えない。
Piapro Studioは初音ミクなどのバーチャルシンガーを歌わせるためのエディタで、初音ミクをはじめとするCFM製品に付属している。
従来は、歌声を合成するためのシステムとしてVOCALOIDのエンジンを借りる形で使っていたが、新バージョンのPiapro Studioには独自に開発した歌声合成エンジンを搭載。ソフトウェア全体を内製化した。初音ミク NTはその専用音源として調整を加えたもの。
自社製エンジンの採用により、新しいPiapro Studioでは、曲のテンポや“ノリ”に合わせて「表現スタイル」を適用すると発音や音程を自動で調整できたり、ワンクリックで「アタックの強い発音に差し替える」「自然な発音に切り替える」といった操作ができる。
声の“ハリ”や強弱をコントロールする「Voice Voltage」や、声の震えをコントロールする「Voice Drive」などのエフェクターも搭載し、ささやくような声からデスボイス(意図的に出すだみ声、がなり声)まで声を変質させられるようにする。
8月のメジャーリリースに先駆け、3月中旬にPiapro Studioと初音ミク NTを同梱したプロトタイプ版を発売し、ユーザーからソフトウェアについての意見や要望を集める。プロトタイプ版の価格は1万9800円(税込)。初音ミクユーザー向けの優待販売も用意する。予約受付は12月25日から。8月のメジャーリリース以降は正式版に無償アップデートできる。
初音ミク NTの開発状況は8月31日に開かれたイベント「マジカルミライ 2019」でも一部公開された。CFMとヤマハはこれまでもVOCALOID製品の開発で協業してきたが、CFMが初音ミクの新規音源をVOCALOIDではなく自社製のPiapro Studio専用音源として発売する方針を示したため、Twitter上では「ヤマハとの関係はどうなるのか」「今あるVOCALOID音源は販売されなくなるのか」など一部で話題となっていた。
内製化の理由についてITmedia NEWS編集部がCFMに問い合わせたところ「バーチャルシンガーそれぞれの声や個性に合わせて、より細かい設定や発音の切り替え制御を行いたいというのが一番大きな理由だった」と説明した。
ヤマハとの協業は続け、「今まで通り、VOCALOID音源のリリースも検討している」とした。現在販売しているVOCALOID用音源「初音ミク V4X」は初音ミク NTと並行して販売を続ける。
今後は、プロトタイプ版への反応を見ながら開発を進め、アップデートしていく予定。「MEIKO」「KAITO」など、同社が運営するその他の音源についてもPiapro Studio用音源として調整作業を行っているという。
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