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» 2019年12月26日 07時00分 公開

令和元年の東京、1万分の1で表現 じわり人気「御即位記念地図」ができるまで (1/2)

国土地理院が刊行した、特別仕様の地形図「御即位記念地図」がじわじわと人気を集めている。即位の記念地図は、大正、昭和、平成に続き、今回が4回目。デザインを担当したチームでは、伝統を受け継ぎながらも、令和らしくいかに東京を表現するかという葛藤があった。

[片渕陽平,ITmedia]

 天皇陛下御即位時の首都・東京の姿を地図として後世に残す──国土地理院が刊行した、特別仕様の1万分の1地形図「御即位記念地図」がじわじわと人気を集めている。皇居付近を中心とした東西約10キロ、南北7キロのエリアを、四六判(79×109センチ)のサイズに収めた。

photo 国土地理院が刊行した「御即位記念地図」=ニュースリリースより

 10月22日に執り行われた「即位礼正殿の儀」の参列者への配布分、書店などでの一般販売分(税込1380円)を合わせ、刊行から約2カ月で約1万1000部を販売。在庫が少なくなったため、増刷を行っているほどの人気ぶりだ。

 即位の記念地図は、大正、昭和、平成に続き、今回が4回目の刊行。作成を手掛けた国土地理院の小西大介さん(基本図情報部基本図課 調査係)は「地図のデザインをどうするか、1日中ずっと頭の中で考えていた」と振り返る。そこには、伝統を受け継ぎながらも、令和らしくいかに表現するかという葛藤があった。

「大先輩が築き上げたもの」は変えず、立体感・色合いを工夫

photo 国土地理院の藤本和彦さん(基本図情報部基本図課長)

 一般に地形図というと、等高線が引かれ、道路や河川が描かれたものを思い浮かべる人が多いだろう。茶色や水色で塗り分けられた2万5000分の1の地形図は、地理の授業でも見覚えがあるはずだ。

 これに対し、国土地理院の藤本和彦さん(基本図情報部基本図課長)は「今回の地図は目的が異なる。同じ地形図ではあるが、特定のテーマに重点を置く『主題図』の要素が強い。東京の姿を描くために、どんな表現が適しているかを模索した」と説明する。高層ビルが林立する一方、意外にも緑が多く残されている──そんな東京の様子を、国内外に分かりやすく伝えることが目的だった。

 縮尺はよく見かける2万5000分の1、5万分の1ではなく、平成の記念地図と同じく1万分の1に設定。藤本さんは「2万5000分の1だと建物1つずつが詰まって見えてしまうし、2500分の1だと地図の範囲が狭くなる。東京の街並みを表現するには物足りないので、1万分の1を採用した」という。

photo 皇居付近を中心に、東京の街並みを1万分の1で表現

 地図のベースになる測量データは、2万5000分の1の地図と同様、地理院が蓄積してきたものを使っている。こうした根幹の部分は「大先輩が築き上げたものなので大きくは変えられない」(藤本さん)。地図の実用性・精度を軽視することなく、主題図の要素を押し出すために、立体感と色合いに大きくこだわった。

 デザインを担当した小西さんは当初「高層ビルを立体的に見せたい」と考え、地図上に建物を立ち上げ、鳥のような視点で高いところから見下ろすように描く「鳥瞰図」(ちょうかんず)の手法を取り入れようとしていた。

 しかし新宿や丸の内のエリアでは、ビルが多すぎるために、背後にある道路が消えたり、見えづらくなったりしてしまった。「建物が立ち上がると面白いと思ったが、地図の要素を消し過ぎてしまうのはよくなかった」と小西さんは苦笑いする。薄い色を使い、建物が透けて見えるような表現も検討したが、納得する出来にはならなかったという。

photo 東京駅付近は高層ビルが並び立つ

 最終的に落ち着いたのは、ビルの高さごとに影を付け、立体感を出す手法だった。東京のビル群を、20メートル未満、20〜60メートル未満、60〜120メートル未満、120メートル以上の4段階に分け、段階が上がるほど影を濃くした。

photo 小西大介さん(基本図情報部基本図課 調査係)

 小西さんは、段階の区切りをどう設定するかが難しかったと振り返る。例えば、境界の1つを120メートルではなく100メートルに下げたとすると、110メートルのビルにも濃い影が付くことになり、地図全体の色合いが暗く見えてしまう。全体のバランスを見ながら、基準を決めたという。

 立体感に加え、建物や道路の色付けにもこだわった。「建物を真っ赤にするとキツイ色合いになる」「重厚なイメージに仕上げたい」などの意見を踏まえ、和をイメージした配色を意識し、淡い赤、青、黒を使い分けた。東京の自然は、樹木の高さに応じて緑の濃淡を変えた。

 PCの画面上でカラーを決めても、実際に印刷をしてみると「求めていた色にならない」という事態もしばしばだったという。理想の見え方にならなければ、修正・印刷をやり直すという作業の繰り返しだった。

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