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音声合成はAIの力で“棒読み”を脱した 飛躍の年、2019年を振り返る(1/3 ページ)

» 2019年12月27日 12時00分 公開
[田村一起ITmedia]

 2019年は音声合成の分野にとって、間違いなく飛躍の1年だったといえる。AIが自然な発話や豊かな表情を手に入れ、活躍の場を大きく広げたのが2019年の注目すべき変化ではないだろうか。気付かぬ間にAIの話し声を聞いていることもあるかもしれない。

photo AI美空ひばりの歌声はさまざまな議論を巻き起こした

 これまでは一部の人しか耳にすることがなかった歌声の合成についても、ヤマハとNHKが共同開発した「AI美空ひばり」の登場で、多くの人に衝撃とともに伝わったのではないだろうか。AIが芸術的な表現を身に付け、多くの人が好感を持てる音声になってきたのだ。

 そのために、今までは研究者や技術者しか知ることのなかった音声合成技術が一般の人々も耳にするまでに広がり、さまざまな議論を巻き起こしたといえる。

 そんな19年の注目すべき音声合成ニュースについて振り返りながら、20年の動向を予想してみよう。

AIがプロの歌手になる時代の幕開け

 歌声合成といえば、まず思い浮かべるのはVOCALOIDをはじめとするソフトウェアではないだろうか。従来のソフトウェアによる歌声には機械っぽさがあり、人間でないと分かる声だった。その歌声に魅了される人々も多い。

 そんな歌声合成技術に大きな変化をもたらしたのがAIだ。AIの歌声はもはや人間の声と聞き分けがつかないレベルになり、テレビのようなメディアにも露出するようになった。

 例えば、女子高生AIとして知られている日本マイクロソフトの「りんな」がエイベックスから歌手デビューしたというのは衝撃的なニュースだった。ついにAIがプロの歌手としてメジャーデビューするようになったのだ。その歌声はあまりにも自然で、「AIとは思えない」「実は人間が歌っているんじゃないか」という声も上がるほどだ。今後のAI歌手の活躍を予感させるニュースだった。

りんなのデビュー曲「最高新記憶」

 また、NHKスペシャルで放送されたAI美空ひばりも非常に印象的だった。ヤマハのAI技術とNHKの映像技術などを組み合わせて故・美空ひばりさんの声を再現し、新曲「あれから」を披露したのだ。AI技術によって故人の歌声さえも再現することができるようになった上、多くの人々に感動を与えられるようになったのは、まさに驚きだ。

photo NHKの番組告知ページ

 12月31日には、あの紅白歌合戦にもAI美空ひばりが出場するということなので、まだ見ていないという方は是非チェックしてもらいたい。

 故人の再現という点で倫理的観点から否定的な意見があったのは確かだ。AI美空ひばりの歌声は昔からの美空ひばりファンに大きな感動を与えたが、一方で「テクノロジーを駆使した降霊術のようだ」と、故人をよみがえらせることへの畏怖や違和感を覚えた人もいた。

 AI美空ひばりがテレビに出演したことで故人の再現が現実味を帯び、多くの人に問題提起したという点で、非常に意味のあるニュースだった。

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