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音声合成はAIの力で“棒読み”を脱した 飛躍の年、2019年を振り返る(2/3 ページ)

» 2019年12月27日 12時00分 公開
[田村一起ITmedia]

働き方改革で活躍の場を広げる音声合成技術

 19年は、働き方改革という言葉を耳にする機会が非常に多かった。音声合成技術はこの働き方改革によって、その普及に拍車が掛かった面がある。

 18年頃から増え始めたAIアナウンサーは、19年に入ってから人間の代替として多くのテレビ局やラジオ局で採用されはじめた。地方局では実際に労働時間の削減にも大きく貢献している。

 活躍の場を広げているのはAIアナウンサーだけではない。AIを搭載し、駅の利用客から受けた問い合わせに音声などで回答する「ロボット駅員」や、デジタルサイネージに表示されたバーチャルキャラクターが建物内の受付業務や警戒監視を行う「バーチャル警備員」まで登場した。人間の業務をAIが代替するシステムは業界問わず導入される例が増えており、今後も人手不足解消に大きく貢献していくだろう。

photo セコムらが開発した「バーチャル警備システム」

 AIがまるで人間のように対話するサービスも登場した。LINEは、AIがレストラン予約の電話応対をする「LINE AiCall」というサービスを開始した。

photo LINE AiCallにおける予約電話対応の仕組み(LINEのWebサイトより)

 この電話応対の完全自動化、米国では18年から実証実験が行われていた。日本語の合成はまだ少し機械っぽさが残っていたり読み間違いも多いが、英語の合成は既に人間と遜色ないレベルに達している。あまりにも自然な音声対話ができ、電話ではAIの音声だと気付けないため「AIだと名乗らせるべきだ」と議論が巻き起こったほどだ。日本語も人間と同等のレベルに達するのは時間の問題だろう。

 AIの話し声の表現力も豊かになってきている。音声自体はAIの登場で人間らしさを大きく増したが、感情豊かにしゃべるというよりはアナウンサーのように冷静に応答するものが多く、「AIは無感情で淡々としたしゃべり方をする」と思っている人も多いのではないだろうか。

 ところが、AIは既に「喜び」「悲しみ」といった主要な感情を声で表現できるようになっており、一般層にも普及の兆しを見せている。米国では、音声アシスタントのAlexaが、「うれしそうな声」や「がっかりした声」で返答できるようになった。俳優のサミュエル・L・ジャクソンのようにしゃべるオプションも登場するなど個性の再現もできるようになっており、日本語での対応が待ち遠しい。

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