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こんにゃくに学ぶ、400%伸びるスキンセンサー トロント大学などが開発Innovative Tech

» 2020年01月24日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 カナダのトロント大学とマギル大学による研究チームが2019年に発表した「An ambient-stable and stretchable ionic skin with multimodal sensation」は、人間の皮膚以上に伸縮性があり丈夫なスキンセンサーだ。

 人間の皮膚が約50%伸ばせるのに対し、開発した透明素材は破壊せずその長さの400%まで伸ばせる。研究チームは、AISkin(Artificial Ionic Skin)と呼ぶ。

photo AISkinが伸びる様子

 これは寒天、ゼリー、豆腐、こんにゃくなどで採取されるヒドロゲルをシートに組み込み実現する。ヒドロゲルとは、3次元のナノ網目構造を水で膨潤させたゼリー状物質のこと。ゲルが液体を吸収して網目の中に閉じ込められた水分子が膨張し個体になる現象を指す。

 センサーとして駆動させるために、陰イオンと陽イオンを重ねヒドロゲルの表面に「Sensing Junction」と呼ばれるものを作り出す。AISkinが、圧力、ねじれ、温度、湿度などの変化にさらされると、Sensing Junction全体でイオンの動きを生成し、電圧や電流などの電気信号として測定する。

 これは人間の皮膚が、熱や圧力を捉え、神経細胞がイオンを介して情報を伝達する方法とそれほど違いはない。

 この皮膚に似た伝達方法や伸縮性、丈夫さを兼ね備えたAISkinをウェアラブルデバイスに応用する。粘着で手の表面に貼り付けるられるタッチパッドや、関節などの身体パラメーターを測定し、各部位のリハビリテーションに活用することを想定。ソフトロボットへの活用も期待できる。

photo (A〜D)AISkinを貼り付けて指の曲げ伸ばしによる筋肉のリハビリテーション、(E)手の甲にAISkinを貼り付けたタッチパッドとしてのインタフェース

 次のステップとして、バイオセンシング機能を追加して、汗などの体液中の生体分子を測定したいという。

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