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もう逢えないあの人に瞳AFした Reminiの魔法で合焦立ちどまるよふりむくよ(1/3 ページ)

» 2020年02月27日 07時00分 公開
[松尾公也ITmedia]

 AIを使って故人の歌声で新曲ができたり、CGでその姿で振り付けをしたり、VRで逢ったりすると、ほぼ漏れなく“冒涜(ぼうとく)警察”が出動してくる。それが写真ならどうだろう?

 あの人を被写体にした写真はもう撮れない。手元に残ったのは、解像度が低く、ぼやけた写真だけ。そんな人向けの、革新的なモバイルアプリが登場した。

 そのアプリ「Remini」は、思い出を意味するreminiscenceという英単語に由来する。時間が経過したほうが記憶を明確に思い出せるという心理学用語でもある。このアプリの意図はそこにあるのだろう。

photo Remini

 過去に撮影した写真に映った人物の顔がぼやけていても、あるべき姿をAIで推定し、補正してくれる。そんな技術だ。開発者は「映画スタジオレベルの修復技術」だと称している。

Remini is an online real-time photo enhancing app. Fully leverages state-of-art AI generative technology, Remini brings professional film production level image enhancing and restoration technologies to our daily life.

 2019年に発売されたモバイルアプリで、iOS版とAndroid版がある。最近、話題になっていたので試してみたところ、アプリ内課金をするに値する結果が得られたので、どういうものかをレポートしたい。

 古い写真を修復するには、従来は高度なレタッチ技術が必要だった。コンピュータ、特にPhotoshopが使われるようになってからは容易になったとはいえ、たくさんのレイヤーを使ってマスクを切り、ぼかしたりシャープにしたり、場合に応じてさまざまなツールを使う必要があった。

 それも、もともとの写真の解像度が低い場合にはしょうがない。しかし、単に解像度を上げるだけではノイズが発生し、思ったような効果は得られない。

 そこに、AIを使って解像度を上げる技術が登場した。CNN(畳み込みニューラルネットワーク)を使ったwaifu2xというものが2015年に登場し、脚光を浴びた。もともとは解像度の低い「俺の嫁(英語ではwaifuという絶妙な訳がある)」萌え絵を高解像度に変換する技術だ。年々改良されていて、現在は写真も解像度を上げてくれる。確かに解像度は上がるのだが、高精細に見えるかというと、そこまでの効果は期待できない。むしろ、高まった解像度を使って、その後の処理がしやすくなるというメリットの方が大きい。

 古い白黒写真に色をつけてくれる技術は早稲田大学をはじめ、いろいろなところから出ている。自分でもいくつか試しており、この連載でも記事にしている。

 最近ではPhotoshop Elementsも同等の技術が実装されていて、簡単に使うことができる。もっとも、技術的に大きな進化はない。それでもPhotoshopなので、いったん自動着色したあとにマニュアルで編集作業ができることのメリットは大きそうだ。

 AIを利用したという売りのFaceAppなどのメイクアップ系アプリは、目を大きくしたり美肌にしたり、見た目をオリジナルから大きく変えるもので、「映え」をよくするにはいいかもしれないが、元の人物像からは逸脱しがちだ。絹目の紙焼きによる粗い肌をスムーズにするなど、一定の効果はある。

 このように、AIにアシストされた写真修復は進化を続けてきたわけだが、Reminiがすごいのは、元の人物像からあまり逸脱せずに、当時はそうだったなあと思わせるくらいのリアリティーで顔を再現してくれるというところにある。

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