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リストバンドは“魔法の鍵”──ウェアラブル端末が変える、テーマパークの姿テック・イン・ワンダーランド(3/4 ページ)

» 2020年03月02日 07時00分 公開
[宮田健ITmedia]

 例えば、ディズニーのテーマパークに登場するミッキーマウスなどのキャラクターが、あなたが何も伝えていないのにあなたしか知らないようなことをしゃべり出したら、それは魔法に見えるのではないでしょうか。ミッキーマウスは魔法使いですから、きっとそんなこともできてもおかしくありません。実際、ミッキーマウスはかつてゲストと普通に(?)会話をしていたことがあるので、そんな魔法も可能になるはずです。

ゲストと会話できるミッキー。残念ながら現在では行われていません

 その裏では、こんなことが行われるはずです。マジックバンドからはゲストの情報を引き出すこともできますので、キャストやキャラクターはその読み取り結果から、目の前のゲストがどんな目的でここに居るのかが分かるわけです。ディズニーでは舞台上で演じることから、従業員をキャストと呼んでいます。演者であるキャストは、ゲストの来園理由を理解した上で即興劇という仕事をこなすのです。

 もしかしたら、セキュリティに気をつかっている人は「個人情報がバンドに収められているのは怖い」と思うかもしれません。マジックバンドを万が一落としてしまったら、決済され放題ですし、個人情報も漏えいしてしまうのではないか──と懸念する人もいるのではないでしょうか。

 ディズニーはその点に関してもしっかりと考えています。正確にはマジックバンドそのものには個人情報は記録されておらず、あくまで「ID」だけが格納されており、個人情報はシステムのサーバ内に保管されています。入園時や決済時は、そのIDだけを読み取り、オンラインでシステム上のアカウントと突合、処理を行っています。

 そのため、ゲストがマジックバンドを落としたり、盗まれたりした場合は、スマホを用いて自分のアカウントとマジックバンドとのリンクを切れば、不正利用を防ぐことができます。高額な商品を購入する場合は、マジックバンドで「ピッ!」としたあと、4桁のPINコードを入力する必要もあるため、被害を抑えられます。

photo ウォルト・ディズニー・ワールドの個人アカウントを管理するWebサイトから、現在利用しているマジックバンドの一覧を確認でき、無効化も行える

 もう一つ気になるのは、プライバシーの問題。上記でも紹介したように、かつてウォルト・ディズニー・ワールドでは、ゲストと会話できるミッキーが存在していました(イメージとしては、東京ディズニーシー「タートルトーク」のミッキー版)。遠隔センシングと位置情報の履歴を基に、「キミ、ホーンテッドマンションに行ったよね? 後ろにゴーストがついているよ、ハハッ!」というような会話もあったようですが、一部テストにとどまり、現在は行われていません。

 また、ゲストが何も伝えていなくても、キャストがマジックバンドからの情報を基に「誕生日おめでとう!」と祝ってくれることも、現在は行われなくなりました。マジックバンドのロールアウト後、魔法を超えたプライバシーの課題があると捉えられたようです。といっても、誕生日を迎えるゲストの多くは自ら「誕生日です!」と書かれた無料のバッジを付けていますので、多くの場所でキャストやキャラクターに祝ってもらえます。

マジックバンドを紹介する1分ほどの動画。当初は、最後のシーンでキャストが「ハッピーバースデー!」というせりふがあったのですが、プライバシーの問題があったのか、後に差し替えられてしまいました

 こういったプライバシーの問題は現在でも残っているため、ウォルト・ディズニー・ワールドでは遠隔センシングを拒否する方法として、近接通信のみが可能な従来型のカードも提供しています。

photo マジックバンドの注意書きとして、遠隔センシングを拒否したいゲストはカード型も用意していることが各所に記載されている

マジックバンドは日本には来ないの?

 このように、テーマパークは技術を通じ、来園者に魔法のような体験を提供する方法を模索しています。インタラクティブワンドやマジックバンドはその一例と考えられるでしょう。おそらく、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのパワーアップバンドも優れたアイテムになるはずです。

 ところで、この仕組みは東京ディズニーリゾートには導入されないのでしょうか。

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