ITmedia NEWS > STUDIO >

音楽サブスクの2トップ、SpotifyとApple Musicのレコメンドシステムはどう違う?(2/3 ページ)

» 2020年04月02日 06時40分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]

選曲システムを磨き上げてきたSpotify

 これは筆者の完全な推測だが、Appleからすると「iTunes Storeの販売実績」という格好のデータをApple Musicのレコメンドに利用しない手はない、といったところではないだろうか。さらに邪推すると、Beats Musicを買収し、そのシステムの延長線上に構築したApple Musicだけに、システムによるレコメンドの仕組みがSpotifyに比較して脆弱なのではないかと疑っている。

 というのはBeats Musicは、当初100%人力によるプレイリスト作成を行っていたからだ。サービス開始から5年近く経過するApple Musicだけに、当然ながら、なんらかの形でシステム化は進めてはいるだろうが、それでもいまだに、iTunes Storeの実績と連動してストリーミング数が多いという事実を無視するわけにはいかない。

 ちなみに、Appleは、2018年9月に音楽認識アプリのShazamを買収している。当然ながら、現在では、Shazamから得られるデータをレコメンドやプレイリスト作成に反映させているであろう。

 その一方で、サービス開始当初から、ストリーミング一択で勝負するSpotifyの場合、良質なレコメンドやプレイリストの提供がサービスの魅力向上に直結するだけに、選曲システムを磨き上げてきた経緯がある。筆者のレーベルにおいて、Spotifyの売上が低いのは、iTunes Storeのランキング実績のような外部要因が加味されないため、Spotifyのシステムが選曲してくれない、という単純な理由によるものと思われる。

photo SpotifyのHome画面でレコメンドされる楽曲はシステムが選曲している

 そこで気になるのが、Spotifyのレコメンドは、どのような仕組みで行われているのか、という疑問である。例えば、モバイルアプリやパソコン用クライアントのHome画面に表示される楽曲やアルバムは、各ユーザーの好みに合わせて高度にパーソナライズされている。これは、「Bandits for Recommendations as Treatments」と呼ばれるシステムが、過去の履歴をもとに、選曲している。

 ただ、履歴といっても、単純な再生履歴をとったものではなく、再生時間、スキップ、プレイリスト作成時の選曲、位置情報、SNSへの共有といったものを学習して選曲しているという。ちなみに、SpotifyやApple Musicでは、30秒間再生されて初めて、1ストリーミングとカウントされる。

 Spotifyでは、このようなシステムによる選曲だけでなく、人的パワーによるタグ付けも実施し、いわゆるハイブリッド方式を採用しているという。そのタグは1000項目にも登るそうで、「元気が出る」「二日酔いに効く」「桜の季節に」などのリスナーのシチュエーションに合致したプレイリストを作成する際に威力を発揮しているようだ。

 ただ、これらは、ネット上から拾ったSpotifyのレコメンドシステムに関する記述や、関係者への聞き取りなど、情報の断片を筆者がつなぎ合わせて推測し、考察した結果であることはご留意願いたい。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.