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リモートワークで新人教育はどう変わる? オンライン研修をした中小企業の気付きと悩み(2/3 ページ)

» 2020年05月13日 07時00分 公開
[村上万純ITmedia]

 まず、急きょリモートで行うことを決めたため、PCの支給が間に合わない受講者がいた。私物のPCを利用してもらったが、受講者ごとにOS、言語設定、インストールされているソフトの違いなどがあり、個別で対応する必要があった。自宅の通信環境が不安定な受講者もいた。さらに、同社は「G Suite」などの各種ツールを業務で使っているが、受講者ごとにツールの習熟度にばらつきがあり、「予想していたより、ツールの使い方や個別のフォローに時間がかかりました」という。

 こうした個人ごとの知識のばらつきとそのフォローは、数百人、数千人という新入社員を迎える大企業でも大きな問題となるだろう。ゴーリストでは、研修資料やその進め方に関するドキュメント化が進んだというが、こうした取り組みは他社でも重要になりそうだ。

 また、研修を担当する企業側から見ると、オンラインでは受講者の反応が分かりにくいという問題があった。「リアルだと、眠そうな人がいればその場で質問できますが、オンラインだと話を聞いているかどうかが分かりにくいです。研修は1コマ30分だったのですが、それを10分単位に区切ったり、途中でアンケートをとったりして双方向なコミュニケーションになるような工夫が必要かもしれません」(入倉さん)

 結果的に、研修を通してエンジニアの素養のある人が見つかったため、開発部門などへの配属をスムーズに行えた。既に業務の大半はリモートで行える環境にあるため、現場配属後も大きな混乱はないようだ。

新人の孤立をどう防ぐか 重要なのは「仕事以外の雑談」「悩みの解消」

 コミュニケーションについても、多くの企業が悩んでいる。オフィスにいれば、新入社員をランチに誘ったり、ちょっとした雑談をしたりということもしやすい。3人の新人が入社したラーニングエッジでは、3月20日ごろから全社でリモートワークを実施。4月以降は、新入社員を含めた全社員を孤立させないことを強く意識していたという。

 具体的には、ビデオ会議ツール「Zoom」を使い、全社で週に1回、部署ごとに毎日、朝と夕方の定例会を実施。社員が本音を話しやすいように1on1でのミーティングを実施するなど、ビデオ会議で顔を合わせて会話をする機会を増やした。

ラーニングエッジの金澤真史さん(マーケティンググループ プラットフォームユニット マネジャー)

 同社の金澤真史さん(マーケティンググループ プラットフォームユニット マネジャー)は、「全社で集まる場が増えたので、オフラインのときよりも話す機会が増えた気がします。テキストでのコミュニケーションが増えると生産性が下がるので、それを最小限にし、短時間のZoom会議の頻度を上げることで生産性を取り戻しました。私の場合、業務時間の7割はZoomを使っている感じです」と説明する。

 部署ごとの定例会では、仕事に関係ない雑談を意識しているという。「雑談の場は重要で、その間は気を抜くことができます。最近はお昼の時間に、社員が自由に出入りできる“Zoom食堂”を始めました。部署間のコミュニケーションができないという課題があったのですが、食堂には取締役がふらっと入ってきたりもします」(金澤さん)

 Zoomのバーチャル背景を設定している社員も多く、背景画像によってその人の趣味や部屋の様子などが分かるのも、コミュニケーションの活性化につながっているという。

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