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家庭用プリンタで印刷、貼れる生体センサー「PhysioSkin」 ドイツの研究チームが開発Innovative Tech

» 2020年07月13日 10時38分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 ドイツのザールラント大学とライプニッツ新材料研究所(Leibniz Institute for New Materials)による研究チームが開発した「PhysioSkin」は、家庭用インクジェットプリンタを用いて皮膚に貼れる生体センサーを作成する手法だ。プリンタで印刷した電子回路を人間の皮膚上に貼り付けて、電気的な生体信号を捉える。

photo (左)家庭用インクジェットプリンタを用いて電子回路を印刷している様子 (右)印刷した電子回路を手首の内側に取り付けて生体情報を取得する

 まず、プリンタで電子回路を印刷するため、インクカートリッジをカスタマイズする。空のインクカートリッジに、特殊なインク「導電性銀ナノ粒子インク」と「導電性ポリマーインク」、「絶縁インク」 をそれぞれ注入し、プリンタ内部にセットする。後はデザインした回路図を普通に印刷するだけで電子回路を作成できる。

 印刷用紙としては、皮膚上に転写する市販のタトゥーデカール紙を使う。仕上がった電子回路は、皮膚だけでなく、Tシャツなどの衣類にも転写できる。厚さ約1µmと非常に薄いため、装着しても邪魔になりにくいのも特徴だ。

photo 印刷した電子回路は、Tシャツなどの衣類にも転写できる

 皮膚に貼り付けた電子回路は、装着者の生体信号を捕捉する。筋肉活動を「sEMG」(表面筋電図)、汗腺の状態を「EDA」(皮膚電気活動)、心臓の電気的活動を「ECG」(心電図)で捉える。貼付場所は、信号を捕捉しやすい手首の内側や胸などが望ましいだろう。

 このように捕捉した生体情報は、さまざまな用途に活用できる。例えば、手首の内側に転写してビデオチャット相手に心拍数を伝える、Tシャツの肩に転写して腕の動きによる筋肉活動を捉える、VR体験中の覚醒を検出するなどの利用シーンが想定される。

photo 手首の内側に貼り付けた生体センサーから心拍数を取得している様子

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