このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
大阪大学、米マサチューセッツ工科大学(MIT)、英サセックス大学による研究チームが開発した「FoodFab」は、食品を印刷できる3Dプリンタを用いて、カロリーと満腹感のバランスを制御する研究だ。食品の形状を変化させることで、低カロリーでありながら高い満腹感を与え、過度なカロリー摂取を抑制する。
実験では、内部形状を変更した同じカロリーの食品(実験ではクッキー)を複数作成し、これらを食べ比べて満腹感の変化を調べた。具体的には、食品のインフィル(内部をどれだけ充填するか)のデザインパターンと密度を変更し、形状の異なる食品を印刷する。
印刷した形状の異なる食品を被験者30人に食べてもらい、咀嚼(そしゃく)時間と満腹感を計測する。咀嚼時間は顎関節に取り付けた筋電位センサー(EMG)で、満腹感はアンケートへの回答で計測。咀嚼時間の長さと満腹感の相関を調べた。
結果として、インフィルパターンと密度を変えると咀嚼時間と満腹感も変わることが分かった。咀嚼時間が長いと満腹感が上がることも確認。このことから、インフィルパターンと密度の調整で満腹感が制御できることを実証した。
研究チームは、以上の実験結果から日頃のカロリー摂取量をサポートするシステムを開発した。
システム側で、空腹レベルと食べたい食品名、フィットネストラッカーから自動的に取得するか事前に定義した1日のカロリー消費量を入力し、自動的に食品の設計図を作成する。
その設計図どおりに3D印刷した食品は、満腹感を得られながら最適なカロリーを摂取できる食べ物となる。ユーザーは、この食べ物を食べ続けることで、過度なカロリー摂取が抑止可能となる。
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