話を音楽のストリーミングに戻そう。音楽業界には、放送業界のようなラウドネス規定が設けられていないため、前述のようにプレイリスト再生した場合、楽曲の音量感に差異が生じ、快適なリスニング体験を提供できない可能性がある。
そこで、Spotify、Apple Music、YouTubeといったストリーミングサービス各社は、コンテンツの音量感を統一すべく、「ラウドネスノーマライゼーション」(音量感の平準化)を行うための仕組みを設けている。プラットフォーム側で半強制的に音量感をそろえて提供しようという機能だ。
「半強制的」と述べたのには理由がある。SpotifyとApple Musicは、再生用のアプリ設定で、ラウドネスノーマライゼーションを適用するかどうかをユーザー側で決めることができるからだ。
SpotifyのiOS用アプリの場合、設定→再生→「オーディオノーマライズを有効」で選択できる。Apple Musicは、「設定」アプリの「ミュージック」→「音量を自動調整」でONとOFFを切り替えることが可能だ。一方、YouTubeは、全コンテンツに対し強制的にラウドネスノーマライゼーションが適用されるようだ。
下記は、主だったプラットフォームのラウドネスノーマライゼーションの推定値だ。各社とも、この基準値に合わせて音楽を送出している。計測値がこれより高ければ、音量を抑えて、低ければこの数値まで増幅しているわけだ。ただ、Spotifyだけは、「Spotify for Artists」においてラウドネス値を正式公開している。
J-POPは、総じてこの既定値より音圧が高いため、音量を絞って送出されていることになる。国産プラットフォームのAWAの音圧規定が高めなのは、そのような国内事情を反映したものだと推測できる。
音楽制作者として筆者が懸念するのは、高い音圧の楽曲に対し、ラウドネスノーマライゼーションが適用され強制的に音量を下げられてしまうと、音楽の聴こえ方がアーティストの意図に反するものになってしまう可能性があるということだ。
高音圧の楽曲に対し、ラウドネスノーマライゼーションがかかった楽曲は、再生機器の音量を上げた場合でも、ただでさえ小さなダイナミックレンジがさらに小さくなり、平板で薄っぺらさを感じてしまう場合がある。
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