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» 2020年07月31日 07時00分 公開

コロナ禍でFAX・Excelから脱却 感染者データをクラウドで管理 ITで変わる自治体の今 (1/2)

役所では、紙とファクスを使った情報共有などの文化が根強く残っている。だが、新型コロナウイルスの感染が拡大し、地方自治体にもスピード感ある情報共有が求められるようになった。この状況に対応するため、クラウドを活用する自治体も現れつつある。その活用法はどんなものか。

[濱口翔太郎,ITmedia]

 「紙に押印し、三つ折りにしてひたすら封入したり、部署間の連絡にファクスを使ったり。公務員の業務は非効率だ」――元公務員で、現在はサイボウズ営業本部で働く蒲原(かんばら)大輔さんは、同社がこのほど開いた記者説明会でこんな現状を明かした。

 蒲原さんは2011年に都内の区役所に新卒で入庁。職員として働いた後、16年にサイボウズに転職した。キャリアチェンジのきっかけは「自治体の非効率性に問題意識を持った」こと。現在はサイボウズのPaaS「kintone」などを自治体向けに販売する営業マンに立場を変え、業務効率化を支援している。

 kintoneは、必要な要素をドラッグ&ドロップで組み合わせるだけで、コーディングをすることなく業務用システムを構築できるツール。知識があれば、IT部門だけでなく業務現場でもシステムを開発できるのが特徴だ。

 昨今は新型コロナウイルス感染拡大などの影響もあり、従来は紙とファクスが当たり前だった役所の現場でも、kintoneを導入する例が少しずつ増えているという。

kintoneで大阪府民の感染状況を管理

photo コロナ禍初期の大阪府の課題(出典:大阪府)

 その一つが、IT活用に力を入れている大阪府庁だ。大阪府庁では緊急事態宣言中の4月20日から、kintoneを使って「新型コロナウイルス対応状況管理システム」を構築。新型コロナウイルスに感染した府民の健康状態を細かく把握している。

 軽症者のスマートフォンに健康状態の入力フォームを送り、日々の体調を入力してもらった上で、保健所職員と府・市の職員の間でデータを共有。内容を確認して集計し、感染者数などの情報を公式サイトに載せている。

 感染者のデータはクラウド上に蓄積するため、健康状態を定期的にモニタリングしたり、病床の空き状況をリアルタイムで可視化したりといった対応も可能になった。7月現在、大阪府内で判明している軽症患者の95%が、このシステムで自身の体調を報告しているという。

 大阪府はこのシステムのテンプレートを他の自治体に無償提供し、他地域のコロナ対策を支援する取り組みも始めている。

photo 大阪府が構築したシステムの仕組み(出典:大阪府)

当初は18個のExcelを職員が手作業でマージ

 そんな大阪府も、コロナ禍の初期は感染状況の把握に手間をかけていた。「保健所職員が患者本人に電話をかけて健康状態を聞き、その内容をExcelに打ち込んでいた。資料は必要に応じてメールで府の職員に送っていたが、紙に印刷してファクスで送ることもあった」と、大阪府庁の山縣敦子さん(スマートシティ戦略部参事)は振り返る。

 各所から大阪府庁に届くExcelファイルは日に18個ほどで、職員は毎日、これらを1つのExcelファイルにまとめる作業に追われていたという。

 「患者さんへの電話は1日2回で、1回当たり20〜30分。体温を測ってもらうだけでなく、検査で陽性になった時期や、入院先の病院、退院後に静養していた家やホテルなども聞くので大変だった」(山縣さん)

 大阪府は、このプロセスを非効率だと判断し、早めの切り替えを決めた。kintoneを使ったアプリ開発が始まったのは、緊急事態宣言が出される直前の4月6日。その後、2人の担当者が1週間でシステムを開発した。次の1週間で運用ルールの策定と周知を行い、20日に利用を始められる体制を整えた。

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