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» 2020年07月31日 22時01分 公開

「泥臭い試行錯誤の繰り返しだ」 LINEが“人に寄り添ったAI”に投資を続ける理由 この1年を振り返る (1/2)

LINE AI DAY基調講演で明らかになった、新型コロナウイルス感染症対策への貢献。

[笹田仁,ITmedia]

 厚生労働省は新型コロナウイルスの水際対策として、海外からの帰国者に対する健康チェックを行っている。帰国後の14日間、最寄りの保健所を通じて本人に電話をかけ、健康状態を確認するものだが、この負担の大きい作業にLINEのAI技術を導入して省力化を図っている。

 厚生省が4月に運用を始めたシステムでは、LINEのAI技術「LINE BRAIN」を活用した音声応対サービス「AiCall」とチャットbotを組み合わせ、保健所職員の代わりにシステムが対象者に電話をかけられる。さらに音声応答で体調を確認し、得られたデータの記録までを自動で行えるという。検査で忙しい保健所職員の業務をAIがまさしく代行して負担を減らしている。

 LINEでAI事業を指揮する砂金信一郎氏(執行役員、AIカンパニー カンパニーCEO)は、7月29日に開幕したイベント「LINE AI DAY」(オンライン開催)で、LINE BRAINの取り組みを振り返りながら、同社が掲げるAIのビジョンを話した。

「人に優しいAI」を目指して

 LINE BRAINが登場したのは2019年7月。これまでの1年でチャットbotやOCR(Optical Character Recognition:光学文字認識)、音声認識や音声合成、対話エンジンなどを組み合わせた電話の自動応答、さらに顔認識と運転免許証などの決まった形式の証明書を高度な技術で認証するeKYC(electronic Know Your Customer:本人確認)といったサービスを展開し、延べ280社を超える企業から好評を得ているという。

photo LINEのシステムは検査で忙しい保健所職員は保健所職員の負担を軽減した
photo LINE執行役員、AIカンパニーのカンパニーCEOを務める砂金信一郎氏

 砂金氏は「LINEが目指すAIは、人に優しいAI」と説明する。人の仕事を奪ったり、効率だけを追求したりではなく、多くの人が日頃の業務や生活の中で抱えている「面倒くさい」「煩わしい」と思うことを肩代わりする、人に寄り添ったAIを目指しているという。

 これまで同社はAIを活用した音声アシスタント「LINE Clova」と、Clovaの要素技術をAPIとして企業に提供するLINE BRAINの2つをそれぞれ別に推進してきたが、「LINE CLOVA」(全て大文字)というブランドに統合。LINEが持つAI技術を表すブランドを1つにする。

photo スマートスピーカー「LINE Clova」と企業向けのAPI提供サービス「LINE BRAIN」を「LINE CLOVA」というブランドに統合する。「LINE BRAIN」のブランドで提供してきた「LINE BRAIN Chatbot」や「LINE BRAIN OCR」などは名称が変わる

AI技術の価値がより重要なものになるだろうという思い

 砂金氏は、LINE BRAINについて「万能でも、網羅的なものでもない、より自然なユーザー体験を実現するために必要な要素技術に特化して取り組んでいる」と説明する。具体的には日本語での音声認識、音声合成、言語解析。画像処理の中でも特に言語依存性が高いOCRの技術、加えて基礎研究やAIを応用した製品やサービスの開発を推進しているという。

 LINEがAIの領域に多くのリソースを投下する理由について、砂金氏は「近い将来、環境が変わったときに、われわれのAI技術の価値がより重要なものになるだろうという思いがある」と話す。

 「AIの開発というと、すごくキラキラしたカッコイイものと捉える方もいるかもしれないが、実際はひたすらに学習データをきれいにクレンジングして、それをAIに学習させて、精度を改善する。泥臭い試行錯誤の繰り返しだ。数え切れないほど繰り返すことで、実際の業務で使えるレベルまで引き上げている」(砂金氏)

 LINE CLOVAは今後、精度の改善を続けることはもちろん、新たなサービスの開発も進めているという。その中の1つに「AiCall Console」がある。現在、現場にAiCallを投入するには、LINEのエンジニアによる膨大な調整が必要で、より良いユーザー体験の実現は容易ではないという。

 その調整作業をより簡単に済ませられる設定コンソールがAiCall Consoleだ。これが使えるようになれば、エンジニアが現場に出向くことなく、LINEのパートナー企業がAiCallを設定し、現場に展開できるようになる。

 もう1つ、「eKYC for Account Check」は、金融機関の口座が休眠状態でないか、ある程度の頻度で使われているかなどを定期的に確認するサービスだ。この作業を本人確認のeKYCの技術を使って実現する。現在、多くの金融機関ははがきのやりとりに頼っているが、eKYC for Account Checkが実用されれば、LINEでメッセージを送って、反応してもらうだけで確認作業が完了できるようになる。

 砂金氏はイベントの中で開発中のソフトウェア「CLOVA Note」(仮称)を紹介した。音声認識技術を利用して、会議などの音声から議事録を書き起こすものだという。現時点では正式版の提供時期は決まっていないが、年内には詳細を発表したいとしている。

photo LINEが開発中の「CLOVA Note」。音声を聞き取って、文字の形に書き起こす
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