一方、LINEがAIに注力する延長線上には、生活のあらゆる場面にLINEがサービスを提供してユーザーを支援するというビジョンがある。
LINE AI DAYの基調講演に登壇した、LINE取締役でCSMO(Chief Strategy and Marketing Officer)の舛田淳氏は、LINEが目指す世界を表すキーワードとして、「Life on LINE」を挙げた。この言葉は2019年6月の「LINE CONFERENCE 2019」にも登場したもので、起床時に鳴らすアラームや、通勤中に聞く音楽、飲食店における決済など、生活のあらゆる場面で必要なサービスをLINEが提供して、ユーザーの生活を支援するということを指す。
Life on LINEを実現する上での重要な考え方として舛田氏は、「デジタルトランスフォーメーション」(Digital Transformation:DX)を挙げる。これはLINEのサービス開始当初から意識してきたという。
LINEが目指すDXは単純な「デジタル化」ではない。そして、LINEでさまざまな相手とコミュニケーションを取る、さまざまなサービスを呼び出す、といったユーザーインタフェースの話でもない。もっと先の話だ。インタフェースではなく、その後ろのプロセスや体制、さまざまな慣習やルールといった要素をデジタル化し、変化させていくことによって成し遂げられるものだという。
そしてLINEにとっては、DXもまた目標ではなくあくまでも手段だ。デジタル化という変化をどう作り出していくか。そして、その先には、LINEを利用する業者が実現していかなければならない顧客の体験価値の向上という課題があるという。
例えば、ベネッセコーポレーションはClovaの機能を中学生講座向けのタブレット端末に組み込み、音声を通じた日々の学習指導やコンテンツを活用して学習体験をより良いものにしているという。
コンビニエンスストアのローソンは、LINE BRAINのOCR技術を店頭で実施しているくじ引きに活用している。新型コロナの影響で箱を使ったくじ引きが困難な中、レシートに記載した応募番号をスマートフォンのカメラで読み取ってもらうことで、くじのサービスを提供。さらに読み取った情報から、何を購入したのか、客が何を求めているのかといったマーケティングでの活用につなげている。
どの例も、サービス提供者の業務効率が上がるというだけでなく、サービスの利用者にとっても手間を省いてくれる、簡単に利用できる、今までにはないものを提供してくれるサービスになっている。
また、DXには「AI(Artificial intelligence)」と「データ」の2つが不可欠だともいう。舛田氏は「AIを目標のように語る方もいるが、AIもデータも顧客体験価値向上のために必要なもの。この2つによって、どのようなDXを起こし、顧客体験価値を生み出していくのか、高めていくのかということこそが大切」と語る。
DXを「デジタル技術を活用して、ビジネスの在り方を根底から変えてしまうこと」と定義する例もあるが、LINEにとってはLINE BRAINを活用して、業務の形を大きく変えるだけでなく、その業者が提供するサービスを一般消費者に提供する際に、面倒だったこと、難しかったこと、不便だったことなどを大きく改善し、サービスをより簡単に、気軽に利用できること、つまり顧客体験価値を一変させてしまうことまでを「DX」としていると考えられるだろう。
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