ITmedia NEWS > 社会とIT >

「勤務地条件廃止」で応募者急増 GMOペパボが2日で“全社リモートワーク化”できたワケ(2/3 ページ)

» 2020年09月18日 08時00分 公開
[山川譲, 本宮学ITmedia]

 「でも、トラブルが起きたからこそ、問題点の洗い出しができた」と柴田さん。例えば「VPNにつながらない」という課題に対して考案したのが、VPN経由で社内システムにアクセスしなくても働ける手段として、さまざまなクラウドサービスを用意することだ。

 同社はここ数年で、従来ファイルサーバで保管していたファイルのほとんどをGoogleの「G Suite」に移行。一部の重要書類や、複雑なマクロが組まれた一部の業務ファイルなどを除き、ほぼ全てのファイルをG suiteに移行している。

 このほか、全社コミュニケーション基盤には「Slack」、ソフト開発のプラットフォームとしては「GitHub Enterprise」をそれぞれ採用。さらに職種ごとに必要なクラウドサービスを適宜利用している。例えば営業やディレクターなどの職種は、プロジェクト管理/タスク管理ツールとして「Notion」を使う──といった具合だ。

 各部署が導入するクラウドサービスの選定は「その部署に任せている」と柴田さん。一般的に、ボトムアップでITツール利用を広げると全社の情報ガバナンスが効きにくくなる課題もあるが、GMOペパボでは「使っているサービスの良いところを全社に共有してもらう場を作る」ことで、ゆるやかに各部署の利用サービスを把握しているという。

 また、全社のアカウント認証(シングルサインオン)基盤として、クラウドID管理の「OneLogin」を採用。「部署ごとに使うサービスはお任せしますが、できるだけOneLogin対応のものを使ってほしいと伝えている」と柴田さんは話す。

開発用サーバへのアクセス許可は「botに一声」 進化するエンジニア就労環境

 GMOペパボの社員数は約400人。その最も多くを占めるのがエンジニア(約100人)だ。柴田さんによると、リモートワークの本格導入後、エンジニアの就業環境もどんどん進化している。

 「1月以降、足りないソフトは自分たちで開発して補っていきました」と柴田さん。リモートワーク移行前は、VPN経由でないと開発用サーバに入れなかったり、必要なデータベースにアクセスできないといった課題があった。そこで取り入れたのが、Slackを活用した独自のアクセス認証の仕組みだ。

 「Slack上で稼働しているbotに話しかければ、VPNにつなぐことなく開発サーバやデータベースにアクセスできるようにしました。終了するときはそのことをbotに伝えるだけ」。インフラとしてはOpenStackで構築したIaaS環境を利用し、サーバ側の処理で個別ユーザーのアクセス許可・禁止を切り替える仕組みだ。そのユーザーインタフェースしてSlackを利用している。

photo サーバアクセス許可システムの仕組み
photo Slackでbotに話しかける

 「VPNは、同時接続者数が増えると接続速度がどんどん遅くなり、非常にストレスフル。それが耐えきれなかった」と柴田さんは打ち明ける。

 「2020年の今、VPNよりも自宅のインターネット回線のほうが圧倒的に速いので、できるだけVPNを使わずに仕事の成果を上げられるようにしたかった。でもセキュリティがガバガバだと困ります。この方法なら『誰が』『いつからいつまでの間』『何を使っているか』がすぐにSlack上で分かる。むしろ透明性が上がり、もし何かあった時も対応しやすくなるはずです」

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.