リモート環境でも社員同士はSlackなどでコミュニケーションを取っているが、より「つながり」を意識できるユニークな取り組みもある。有志のエンジニアが作った「バーチャルオフィス」はその一つだ。
バーチャル空間共有サービスの「cluster」で作ったこのバーチャルオフィスは、GMOペパボの東京本社をVR空間上に再現。コロナ禍以前に社員たちが集っていた部屋の細部や、窓から見える景色まで細かく再現しており、今では社内行事で使うなど、半オフィシャルサービスのような扱いになっているという。
リモートワークの本格導入から半年以上たち、全体を通じて「かなりうまくいっている」と柴田さんは自社の取り組みを評価する。一方、まだ完全に解決できていない領域もある。例えばディレクターやデザイナーが複数のメンバーと一緒に何かを作る際など、抽象的な議論をする場合には「既存のオンライン会議ツールだと足りていない」と指摘する。
「VRやARにはそういった方向への進化を期待したいと思っています。もう少しデバイスやサービスが進化すれば、設計中のプロダクトについて、VRゴーグルをかけたメンバー同士で『ここをもう少し丸くしたい』とかディスカッションできるようになるかもしれない。そういうテクノロジーの発展に期待したい」(柴田さん)
「他の人の仕事ぶりが見えない」「成果が見えない」など、リモートワークでは「見えない」ことが増える。この課題に対して同社では、社員の成果評価基準を改めたほか、自己評価でも「なぜこの評価がふさわしいと思うのか」を言語化する仕組みに。会社に関わる資料は全社員に公開し、評価資料もオープンにするなど、「見える」情報を増やして対応しているという。
「離れていても一緒に仕事を進めている、一緒に会社を作っているという思いを感じられる、共有できることが大事なんじゃないか」と、柴田さんはリモートワーク時代の企業の在り方を展望する。
一方、従来のオフィスが完全に不要になるとは考えていないという。
「新型コロナウイルスが収束した後、オフィスはコラボレーションする場、『共創』の場になっていくんじゃないかと考えています。個々人が成果を出す、成果を最大化するためにどうするかは自分で考える。その中で、リモートワークもできるし、オフィスで仕事もできる。一人ひとりが一番やりやすいと思える環境を用意しておくことが大事だと思っています」(柴田さん)
新型コロナウイルス感染拡大に伴って、企業はテレワーク導入などの体制変更を強いられた。新しい働き方に適したIT環境を築く上で、大きな鍵を握るのがクラウドの活用だ。
サーバやストレージ、仮想デスクトップ、ビデオ会議、チャット――。インフラや業務アプリにクラウドを使うと、企業は必要に応じてリソースの拡大縮小を行える他、場所を問わない意思疎通を可能にし、柔軟な働き方を実現できる。
だが、クラウドも万能ではない。オンプレミスよりもセキュリティ管理が難しく、障害発生のリスクもある。
企業はどうすれば、課題を乗り越えてクラウドを使いこなし、働きやすいIT環境を実現できるのか。識者やユーザー企業への取材から答えを探る。
第1回:コロナ禍でテレワーク普及も、日本はクラウド後進国のまま? その裏にあるSI業界の病理
第2回:「リモートアクセスできない」――コロナ禍のテレワーク、ITインフラの課題が浮き彫りに 打開策は「クラウド」が首位
第3回:コロナ禍でFAX・Excelから脱却 感染者データをクラウドで管理 ITで変わる自治体の今
【更新履歴:2020年9月18日午前10時30分 当初、在宅勤務スタート時の対象地を「渋谷・大阪・福岡」と記載していましたが、正しくは「渋谷・福岡・鹿児島」でした。おわびして訂正します。】
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