ITmedia NEWS >
ニュース
» 2020年09月30日 18時35分 公開

食いしん坊ライター&編集が行く! フードテックの世界:大豆を“肉”にどう変える? 焼肉やステーキはできる? ファミマと不二製油に聞いた (1/2)

焼き肉やステーキなど、ごちそうに直結する食材である肉。肉に代わる食材として「大豆ミート」が注目を集め、最近はコンビニでも手に入るようになった。大豆ミートはどのように作られ、なぜ注目されているのか――国内でいち早く開発に取り組んできたファミリーマートと不二製油に聞いた。

[武者良太,ITmedia]

 おいしいものが食べたい。毎食お腹いっぱい食べたい。特に肉。焼肉、ステーキ、ハンバーガー、肉野菜炒めに麻婆豆腐に豚汁などなど、肉という食材は僕らにとってごちそうに直結する食材そのものだ。

 そんな肉に代わる食材として近年、注目を集めるのが「大豆ミート」だ。タンパク質の含有量が多く、人が自分の体内では作り出すことのできない必須アミノ酸もバランス良く含まれていることから“畑の肉”と呼ばれる大豆。日本では豆腐や納豆の原材料として多用されてきた。

 この大豆を原材料とした大豆ミート、僕らの生活でも身近なものになりコンビニでも手に入る。中でもいち早く商品化に取り組んできたのがファミリーマートと、同社で扱う大豆ミートを開発する食品素材メーカーの不二製油だ。筆者も発売中の「大豆のお肉!ガパオライス」を食べてみたが、これが実にうまかった。既存の大豆ミートにあったような独特の香りがなく、“大豆のお肉”という先入観がなければ、リアルミートを使ったガパオライスだと捉えただろう。

photo 「大豆のお肉!ガパオライス」。大豆ミートと知らなければ本物の肉のように感じる味と食感だ

 これほど身近になった大豆ミートだが、近年のフードテックブームで急速に普及が進んだのかと思いきや、実は研究開発自体は1950〜60年代から続けられていたのだという。

 そう語るのは、ファミリーマートに並ぶ大豆ミート商品を開発する不二製油の由良篤史さん(開発部門企画戦略室副室長)だ。

 そもそもどうやって大豆を“肉”に変えるのか? 大豆で焼肉やステーキもできるのか? 両社はどんな背景から取り組みを始めたのか?──こんな疑問を、今回は不二製油の由良さん他、同社営業担当の佐藤光さん(営業部門営業第二部第二課主任)、そしてファミリーマートで商品開発を担当する菊永信之さん(商品・マーケティング本部デリカ食品部米飯グループ弁当担当)にぶつけてきた。

連載:食いしん坊ライター&編集が行く! フードテックの世界

ニューノーマル時代を迎え社会にますますテクノロジーが浸透する今、人の根本を支える“食”はどうなっていくのか――“食いしん坊”を自称するライターの武者良太さんと編集の安田が、テクノロジーと食が融合したフードテックの世界に迫ります。

“大豆っぽさ”をどう肉に近づける?

 乾燥状態ではコーンフレークのように見える大豆ミート。匂いを嗅いでみると、きな粉のような、オートミールのような、甘みのある穀物の香りが漂ってくる。

photo ファミリーマートの商品で使われている大豆ミート。左がそぼろ、右が薄切り肉をイメージしたもの
photo 不二製油の由良篤史さん

 このいわゆる“大豆っぽさ”をいかに抑えるかが、消費者に大豆ミートが受け入れられるかのポイントになるという。「大豆の匂いを抑える技術を50年以上も研究してきたのでカバーできるところがありますね」と由良さん。どんな技術かは「詳細はお伝えできないですが」としつつ、大豆ミートができるまでの大まかな流れを教えてくれた。

 大豆ミートは大豆油の搾りかすである脱脂大豆を使う。大豆から油を絞ると、質量の20%が大豆油、80%が脱脂大豆となる。エクストルーダーという機械で撹拌(かくはん)・混練・加熱・加圧して脱脂大豆を繊維状にし、そぼろのような粒形状などに加工・成形していく。

 この加工・成形の段階で大豆ミートの食感をコントロールしながら、商品を完成に近づけていく。こういった工程を経て、不二製油は家庭用には豆腐ハンバーグ、がんもどき、豆腐ステーキ、大豆ミートの麻婆豆腐丼の具、B2B向けには大豆ミートボール、サラダステーキ、大豆ミートのベジバーグなどを提供している。

photo 不二製油の佐藤光さん

 「大豆ミートの弾力を生かし、肉汁が飛び出るようメンチカツの中に入れる例もあります」と佐藤さん。加工食品にも隠れた素材として大豆ミートが配合されているのだ。

 ファミリーマートで使う大豆ミートは、加工・成形され乾燥状態のものをお湯や水で戻し、水気をしぼって味付けをしていく。本物の肉の臭みを取り除くのと同様に清酒を使ったり、香辛料が入ったソースで戻すこともあるという。こうして大豆の香りを抜きつつ調味料の味を染み込ませ、肉らしさを高めていく。

 「メニューに落とし込む際は大豆の香りをどうやって包み込んで、味を整えていくかを重視します。香辛料やスパイスと相性が良いので、ガパオやビビンバ、カレーなどは作りやすいですね」と菊永さん。例えば「大豆のお肉!7種野菜のビビンバ丼」では牛肉の薄切り肉をイメージし、調理を行っているという。

photo 「大豆のお肉!7種野菜のビビンバ丼」

焼肉やステーキはできる?

 ところで現時点の大豆ミートは、そぼろ的なものや小さな肉片のもの、そぼろをまとめたミートボールなどのメニューが多い。焼肉やステーキのような肉メインの商品はできないのだろうか。

 「大豆ミートの1粒や1辺のサイズが大きくなるほど見た目の違和感も出てきます。機械で作るので人工的に見える形になってしまうのです。リアルミートは切るサイズによって形が変わり、赤身と脂身のバランスで色目も違ってきますが、大豆ミートだと野菜炒めにしても明らかに違和感が残ってしまいます」(由良さん)

 他の食材と混ぜて調味料で色を着けても、サイズが大きくなると“本物の肉”に見えない部分が課題だという。これは加工食品全般にいえる課題なのかもしれない。商品開発の難しさを感じる。

photo “大豆ミート焼き肉”を楽しむ日はくるのか(写真はイメージ)
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.