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婚姻・離婚届に印鑑が不要になる? 最近の経験者からちょっと言わせてくれ(1/2 ページ)

» 2020年10月19日 12時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

 脱ハンコで行政改革を進める現内閣だが、法相が婚姻及び離婚届でも押印の廃止を検討しているというニュースが流れた。ネットでも既にいろいろな意見があるところだが、ここは近年婚姻届と離婚届の両方を出した筆者も何か言っておくかなと思う。

この記事について

この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、一部を転載したものです。今回の記事は2020年10月12日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額660円・税込)の申し込みはこちらから

 婚姻届というと、まずは役所に行って書類をもらい、それに記入して出すと思っている方も多いと思うが、実は婚姻届は、書式さえ同じであれば、自分で作っても構わない。実際に各市町村では、オリジナルデザインの婚姻届をダウンロードできるようにしているところも多い。ここでは東京都の例を見ていただこう。

photo 東京都のオリジナル婚姻届

 中にはオリジナルの婚姻届を作ろうなんていうサイトもあるぐらいで、一生の記念になる紙なだけに、いろいろこだわりたい人もいるようだ。だがこの婚姻届、役所に提出してしまうものなので、手元には残らない。残しておきたいのであれば、提出前に自分でコピーをとっておく必要がある。役所ではコピーは原則、してくれないのである。

 婚姻届は受理されたときに効力を発揮する。許可ではないので、審査などもないのである。もちろん民法上は、本人双方の合意があるときに成立するとあるので、騙したり同姓同名の人違いで提出された場合の解消は、離婚ではなく「取り消し」となる。

 さてこの婚姻届の押印だが、届をご覧いただければお分かりのように、左側の一番下に婚姻する両名の署名および押印欄がある。また婚姻には2名の証人が必要なので、その2名の署名と押印も必要になる。

 現在の手続きは書式としてこうなっているので、押印がなければ受理されないのだが、押印が本人確認の証拠になるわけではない。この場合の本人確認は、窓口で行われる。婚姻する両名で提出しにくる場合は簡単で、免許証やマイナンバーカードなど、写真付きの身分証明書で確認する。

 もし都合でどちらかの本人が来られなかった場合は、後日郵送で市町村のほうから、住民票記載の住所に「婚姻届が出されましたが間違いありませんか」的な通知書が届く。もし知らない間に婚姻届が出された場合は、そこで気が付くわけだ。だがこの方法は、いかにも古臭い。例えば相手が郵便物を見張っていて、市町村からの通知書を横取りしてしまえば、本人が分からないままになる可能性もある。

 いずれにしても、婚姻届の押印は認印なので、実印のように法的効力があるわけではない。本人確認は別の証明書を提出するわけだし、本人の意志確認は実務上は窓口で確認することになる。押印はあってもなくても、実務上はあんまり関係ないともいえる。

 一方証人は、届け出時に本人と一緒にくっついていくことはあんまりない。証人は本人たちの結婚の意思を担保するという意味であり、そもそも本人確認が必要なのは婚姻する2名だけである。従って押印も、あくまでも儀礼的なものでしかない。

 ただ祝い事なので、自署や押印が面倒だという人はいないだろう。

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