音声合成ソフトの開発や販売を手掛けるAHS(東京都台東区)は10月30日、AI技術を活用した歌声合成ソフト「Synthesizer V AI」を2021年初頭に発売すると発表した。楽譜データを入力すると、あらかじめ人間の歌声を学習したAIが自動で人間らしい歌声をシミュレーションして合成する。
7月に発売した歌声合成ソフト「Synthesizer V Studio Pro」に、ディープニューラルネットワーク(DNN)を活用した歌声合成機能を追加。従来は、あらかじめ収録しておいた歌声データを加工して切り貼りする「素片接続」という方式で歌声を合成していた。既存ユーザーには無償でアップデートする。
音楽制作ソフト(DAW)との連携機能を搭載。音声の品質を抑えることで、AIによる歌声の合成スピードを上げる機能も追加した。
AHSはすでに別のAI音声合成ソフト「CeVIO AI」用音源の発売も発表しており、AIによる歌声合成ソフトの取り扱いは2例目になる。AHSの尾形友秀代表は「両者は使い勝手がだいぶ違う。互いに補いながら使えると思う」としている。
Synthesizer V AI専用音源として「Saki」「小春六花」も発売する予定。SakiはSynthesizer V Studio Pro用の既存音源を持っているユーザーに期間限定で無償提供し、商用利用も認める。小春六花はSynthesizer V Studio Pro用の素片接続型の音源と、Synthesizer V AI用音源を発売するという。
小春六花はせりふを入力すると話し声を合成できるTTS(Text To Speech)ソフトも発売する。当初はAHSが販売している素片接続型のTTS「VOICEROID」用の音源になる予定だったが、計画を変更して話声も合成できるCeVIO AI用のトーク音源として発売する。
変更の理由として尾形代表は「当初、VOICEROIDでの制作を検討していたが、Synthesizer V AIが予定より早く製品化できる見込みになり、その歌声と違和感のない話し声を実現するために(同じAI音声合成の)CeVIO AIでの制作にチャレンジした」としている。
同社は今後も、Synthesizer V、CeVIO AI、VOICEROIDの各種ソフトで製品を発売していくとしている。Synthesizer V AIについては声の“息っぽさ”や力強さといった声質を編集できるよう検証を進めるなど機能拡張を目指す。
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