このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
米カリフォルニア大学リバーサイド校の研究チームが開発した「Coupling magnetic and plasmonic anisotropy in hybrid nanorods for mechanochromic responses」は、金のナノ粒子を用いたフィルムをロボットの表面にコーティングすることで、カメレオンのようにさまざまな色に変化させることができる。
金や銀などの物質を粒径100nm以下のナノマテリアルサイズまで小さくすると、大きさや形、向きによって色が変わるようになる。今回は、金をナノサイズのロッド(棒状)にした素材を集合させることで、色の変化を制御するフィルムを作成。印刷してプログラムにでき、難しい複雑なパターンの表示も可能にする。曲げる、ねじるなどの力を加えたり、特定の方向に並べたりすることで他の色に変化させられる。赤色に見えていたものを、45度に曲げて緑色に変えるなどが可能だ。
問題だったのは、溶液中に浮かんでいる何百万個もの金ナノロッドを、どのようにして同じ方向に並べ、均一な色を表示させるかという点。研究チームは、金ナノロッドにさらに小さな磁性ナノロッドを融合させた。こうして、両方のロッドの向きを磁石で制御することで色の制御に成功した。
これまでも特定の角度で見ると色が変わる材料はあったが、それらの材料は秩序のある微細構造に頼っており、大きな面積のものを作るのは難しく、コストもかかっていた。今回のフィルムは、スプレー塗装をするのと同じように、表面にコーティングするだけなので、大きな物体にも簡単に利用できるとしている。
ロボットの表面にコーティングすることで、生物が色を変えてカムフラージュするように、瞬時に特定の色に変化させて周囲の風景に溶け込ませる機能を持たせることができる。
サングラスをかけて偏光レンズで見たときに精巧な模様が見える機能も実現可能で、認証機能として現金に組み込むこともできるという。
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