先週は、「Xbox Series S」および「Series X」(以下Xbox S/X)、「PlayStation 5」(以下PS5)と、新型のゲーム機が相次いで発売された。西田も、私物のPS5こそ手に入れられていないが、Xbox Series Sは購入できた。
筆者は長くゲーム機とそのビジネスを取材しているが、それは単にゲームが好きだから、ではない。比較的短期間で、定期的にアーキテクチャが大幅に刷新されるコンピュータだからだ。
コンピュータのアーキテクチャは、技術だけで決まるものではない。ビジネス上の要因と根深く絡み合っており、特にゲーム機はその傾向が強い。だからこそ、過去と現在を比較した場合、非常に興味深い点を多く見つけることができる。
今回は、2つの最新ゲームプラットフォームを、「ネットワークサービスとの関わり」という観点から見ていこう。
この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、一部を転載したものです。今回の記事は2020年11月16日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額660円・税込)の申し込みはこちらから。
前の世代である「PlayStation 4」「Xbox One」以降、米Microsoftとソニーのゲーム機は似た部分が多くなっている。同じ時代に、同じような世代の技術を使い、AMDと共同開発したSoCを活用するからだ。
もちろん、同じSoCを使っているわけではない。それぞれに得手・不得手が若干あり、それがゲーム上の表現の違いとして現れることがある。しかし、それは優劣というよりもそれぞれの個性と言っていいレベル。そしてその個性も、1980年代や90年代のゲーム機ほど濃いものではない。
ゲーミングPCとの親和性を高めつつ、もっと手軽に手に入り、プラットフォームとしての完結性の高いデバイスになっていたのが、前世代のゲーム機と言っていい。その結果として、開発効率が向上し、ソフトウェアの充実が図られた。
一方で、ゲーミングPCとの差別化は大きな課題となり、裾野をいかに広げるかの策を充実させるかがポイントとなった、といってもいいだろう。
この観点でPS5やXbox S/Xを見ると、それぞれ向かっている特徴がかなり異なっているのが分かってくる。ポイントは「互換性」だ。
PS5は、PS4とほぼ完全な互換性を持つ。100%ではないが、過去、PS2がPS1の互換性を持っていた時に近い感触だ。
従来と違うのは、現在のゲームプラットフォームは「オンラインが基本」になってきていることだ。ディスクからの起動による互換はもちろんだが、それ以上に、ゲームそのものや互換性向上パッチのダウンロードにより、PS4世代のゲームがより快適にPS5で動く、という点が重要になっている。
PS5のゲームライブラリからは、PS4のゲームもPS5のゲームも、あまり差がなく、同じように見える。どちらも同様に「重要なゲーム」だからだ。
そういう意味では、PS5は新しい高性能ゲーム機であると同時に、「より良いPS4」なのだ。そのことは否定されるべきものではないし、むしろ消費者にはプラスといえる。
一方で、PS5がまだ買えない、まだ欲しいPS5タイトルがない人には、PS4というプラットフォームをメンテナンスしていく必然性がある、ということでもある。
PS4を単純に低価格モデルとして位置付けるのか、それとも、PS5の拡販と低価格化を進め、素早く移行していくのか。
おそらくSIEは、初期には「緩やかな移行」を志向していたものの、今はPS5への移行を加速するつもりなのではないかと読んでいる。PS5へのデマンドが大きいうちに生産体制を整え、加速した方が、「PS5ならでは」のゲームを多く作れるようになるからだ。データ読み込みの速度や3Dオーディオ、コントローラーの工夫など、PS5ならではの部分は多々ある。
「テレビにつながったPS5でしかやりにくいこと」を多くしていき、PS5ならではのゲームを増やすことこそが、SIEの戦略といえる。
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